米国全国コホート研究における自己申告健康データを用いた緑内障高リスク患者特定のための人工知能モデル
著者: Rohith Ravindranath, MS ほか。
清澤のコメント: Ophthalmology Scienceに掲載された新論文です。この研究では、自己申告による健康データを分析し、緑内障リスクの高い対象者を特定しました。その結果、緑内障患者は約10%であり、主な特徴としては従来来認識されているリスク要因(年齢、2型糖尿病、家族歴など)が含まれることが判明しました。とはいえ、これらの結果に目新しさはなく、臨床の現場では今後も最終的にはOCT画像による視神経乳頭陥凹や神経線維層欠損を観察し、ハンフリー30-2視野検査を用いて診断を確定する従来の方法に依存することになりそうです。
導入: 緑内障は視神経を損傷し、治療しないと失明につながる病気です。世界では約8,000万人、米国では約300万人が罹患しています。初期症状は無症状であるため、多くの患者が進行段階で診断される傾向があります。特に、黒人やヒスパニック系コミュニティでは罹患率が高く、進行段階で診断されることが多いと言われています。早期治療は失明を防ぐために重要ですが、広範なスクリーニングは難しく、未診断のケースが多数存在しています。その中で、米国国立衛生研究所が推進する「All of Us」プロジェクトは、AIを活用して効率的なスクリーニングを目指す革新的な取り組みです。
要約: 目的: 緑内障の早期発見は失明予防の鍵ですが、専門的な眼科検査や画像診断が必要なため、大規模な実施には限界があります。この研究では、自己申告による健康データを用いてリスクの高い患者を事前スクリーニングするモデルを開発しました。 デザイン: コホート研究 参加者: 2018年5月1日から2022年7月1日に「All of Us」研究プログラムに登録された18歳以上の参加者。 方法: ペナルティ付きロジスティック回帰、XGBoost、全結合ニューラルネットワークを用いて緑内障リスクを予測。国際疾病分類(ICD)コードを診断基準とし、自己申告データには人口統計情報、健康状態、ライフスタイル、家族歴などが含まれる。 結果: 8,205人中873人(10.64%)が緑内障と診断され、XGBoostが最も高いAUROCスコア(0.890)を達成しました。説明可能性調査では従来認識されているリスク要因(年齢、2型糖尿病、家族歴など)が主要な特徴として確認されました。 結論: これらのAIモデルは、低資源環境での緑内障事前スクリーニングを実現し、高リスク患者を専門的な診断に紹介する可能性を示しました。
コメント