ビジュアルスノウ

[No.4057] 小児におけるビジュアルスノウ(Visual Snow)とビジュアルスノウ症候群(VSS)の有病率

ビジュアルスノウイニシアチブのメールレターを以下にまとめなおしいて紹介いたします。 

The Prevalence of Visual Snow and Visual Snow Syndrome in the Pediatric Population
VSI Collaborator Dr. Carrie Robertson ら)の日本語訳と、一般の方にも分かりやすく再構成した要約です。出典リンク:vsikids.org

小児におけるビジュアルスノウ(Visual Snow)とビジュアルスノウ症候群(VSS)の有病率

著者Carrie Robertson医師、Brandon JonesPaul YoussefChia-Chun ChiangKenneth Mack
目的:電子アンケート調査により、小児におけるビジュアルスノウ(VS)およびビジュアルスノウ症候群(VSS)の頻度を明らかにすること。

  • 背景

「ビジュアルスノウ」とは、テレビの砂嵐のような細かい点が視界全体に常に見える状態を指します。
この症状が3か月以上続き、さらに

  • 残像(palinopsia
  • 自分の目の中の構造物が見える(entoptic phenomenon
  • まぶしさ(photophobia
  • 夜盲(nyctalopia

のうち少なくとも2つ以上を伴う場合、「ビジュアルスノウ症候群(VSS)」と診断されます。

これまでの成人対象の研究では、多くの患者が「物心ついたころから見えていた」と述べていましたが、子どもでの実際の頻度は不明でした。
そこで本研究では、小児でのVSおよびVSSの有病率を明らかにすることを目的としました。

  • 調査方法

20211月から20245月にかけて、517歳の子ども1600人を対象にオンライン調査を実施しました。
質問は23項目で、VS/VSSの症状と片頭痛に関する項目(ICHD-3基準に基づく)を含みます。
病院受診歴のある家族にメールを送付し、学校や地域でも協力を呼びかけました。

  • 結果

1324人が主要項目に回答しました。

  • 31%412人):視界に点が見えると回答
  • 10%135人)3か月以上ほぼ常に点が見える(=VSに該当)

また、

  • 46.7%が残像を経験
  • 17.7%が夜盲を報告
  • まぶしさ(光過敏)は、頭痛なしで
    • 「いつも」感じる:12.7%
    • 「しばしば」感じる:20%

これらを総合すると、8.6%114人)がVSSの診断基準を満たしていました。
平均年齢は13.7歳でした。
VS
の子どもの77%VSSの子どもの79%に片頭痛の既往がありました。

  • 結論

この調査によると、

  • 517歳の小児におけるVSの有病率は約10%
  • VSSの有病率は約8.6%

という結果でした。
これは従来考えられていたよりも高い数字であり、VS/VSSが小児期から存在する可能性を示しています。
視覚的な訴えをする子どもを「気のせい」と片づけず、正しい理解が求められます。

  • 補足

VS/VSSを持つ子どもは、見え方の異常による不安を抱きやすく、学校生活や集中力にも影響することがあります。
ただし、視力や眼底に異常が見られないため、眼科検査では「異常なし」とされる場合が多いのが現状です。
この症状は視覚情報を処理する脳の神経の働きの違いと関連していると考えられています。

保護者向けの情報は以下のサイトで提供されています。
👉 https://vsikids.org

まとめ(一般向け要約)
ビジュアルスノウとは、テレビの砂嵐のような粒がいつも視界に見える現象です。多くは思春期に気づきますが、517歳の子どもでも約10人に1人がこのような見え方を経験しているという驚くべき結果でした。さらに約9%の子どもは残像やまぶしさなどの症状を併せ持つ「ビジュアルスノウ症候群」に該当しました。頭痛や片頭痛と併発するケースも多く、これまで「気のせい」とされていた子どもの訴えの中に、実際には脳の視覚処理の特徴としてのビジュアルスノウが隠れていることがわかってきました。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 新しいリーダー誕生と「暮らしと医療」のこれから;眼科院長ブログ

  2. 自閉症の人がもつ特有の「見え方」とは ―眼科からできる配慮を中心に―

  3. 小児におけるビジュアルスノウ(Visual Snow)とビジュアルスノウ症候群(VSS)の有病率