ビジュアルスノウ

[No.4184] 「ビジュアルスノウ症候群」に対する新しい神経調節治療の臨床研究

スペインとポルトガルで始まる「ビジュアルスノウ症候群」に対する新しい神経調節治療の臨床研究

ビジュアルスノウ症候群(Visual Snow Syndrome:VSS)は、視界にノイズのような粒子が常に見える慢性的な神経性視覚障害です。世界各地で研究が進む中、**Visual Snow Initiative(VSI)**は新たに「神経調節(ニューロモデュレーション)」という治療法に焦点を当てた臨床研究を、スペインとポルトガルで開始することを発表しました。(日本からの応募は困難ですが。)

神経調節とは?

神経調節とは、弱い電気刺激を体外から与えることで脳神経の活動を整える非侵襲的な方法です。手術や薬剤を用いず、神経の信号伝達や脳ネットワークの働きを穏やかに変化させることを目的としています。すでに慢性疼痛やうつ病、神経障害などに応用されており、安全性の高い治療として注目されています。

今回のVSIの研究では、スペインのNESA XSignalという装置を使用します。これは低強度の電流を皮膚表面から流し、神経系に穏やかな刺激を与える装置で、ヨーロッパ連合ではすでに複数の神経疾患に対して使用が認可されています。ビジュアルスノウ症候群にこの装置を用いた臨床研究は、今回が初めてとなります。

研究の目的

この研究の目的は、

  • 視覚症状(スノウ、残像、光感受性など)の軽減

  • 非視覚症状(耳鳴り、不眠、不安など)の改善

  • そして全体的な生活の質(QOL)の向上

    を評価することです。

初期の報告では、神経調節により症状が和らいだという例が散見されており、今回の研究ではその効果を体系的に確認します。

研究の概要

  • 実施場所:スペインおよびポルトガル

  • 期間:1か月間

  • 治療回数:週2~3回、1回あたり約1時間

  • 監督医師:ファビオラ・モリーナ教授(スペイン)とルイ・ファリア教授(ポルトガル)

  • 施術者:現地の有資格医療従事者

この研究はスイス・ベルン大学のクリストフ・シャンキン医師(VSS研究の第一人者)が行っている別の神経調節研究とも連携しており、互いに結果を共有する形で進められます。

参加条件

参加には以下の条件があります:

  1. 医師により正式にVSSと診断されていること

  2. 病歴の確認と**瞳孔反応検査(pupillometry)**を受けること

  3. 以下の禁忌がないこと(妊娠中、ペースメーカー使用中、がん治療中など)

参加者は10名のみ募集され、条件を満たした先着順となります。参加希望者は、以下の研究責任者に直接メールで申し込む形になります。

定員に達した場合、返信は行われないとのことです。

国際的な共同研究ネットワークへ

VSIは世界中の研究者と連携し、VSSに関する知見を共有しています。今回のプロジェクトも、国際的な研究ネットワークの一環として行われ、患者の生活改善に向けた治療法確立を目指しています。


清澤コメント:

ビジュアルスノウ症候群の治療は、これまで有効な方法が少なく、神経生理学的なアプローチが期待されています。今回の「NESA XSignal」を用いた神経調節は、侵襲性が低く安全性も高い方法として注目されます。臨床データの蓄積により、症状の軽減にどの程度効果があるのか、今後の報告が待たれます。


出典:Visual Snow Initiative公式発表 “New Visual Snow Syndrome Study on Neuromodulation in Spain and Portugal” (November 2025)

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