Wallenberg(ワレンベルグ)症候群とは?
Wallenberg症候群は、脳幹の一部である延髄(えんずい)の外側に血流が届かなくなることで、さまざまな神経症状が現れる病気です。延髄外側症候群とも呼ばれます。
主な原因
- 椎骨動脈や後下小脳動脈(PICA)の血栓や塞栓によって、延髄の外側部分が虚血(血の流れが止まる)になることが主な原因です。
全身的な主な症状
この病気では、以下のような神経症状が身体の左右で違った形に出るのが特徴です:
- めまい、ふらつき、嘔気
- 飲み込みにくさ(嚥下障害)
- 声のかすれ(反回神経の障害)
- 同じ側の顔の痛み・温度の感覚が鈍くなる(三叉神経核の障害)
- 反対側の腕や脚の痛み・温度の感覚が鈍くなる(脊髄視床路の障害)
- 同じ側の顔に見られるホルネル症候群(後述)
- 同じ側の手足の協調運動がうまくできない(運動失調)(小脳との連絡路の障害)
【眼科的な症状】
ワレンベルグ症候群では、延髄の障害により交感神経の伝達が妨げられることがあり、眼にも特徴的な変化が見られます。
- ホルネル症候群
片側の交感神経の働きが低下することで、以下のような症状がその側の目に現れます:
- 瞼が少し下がる(眼瞼下垂)
- 瞳孔が小さくなる(縮瞳)
- 目の周囲の汗が減る(無汗症)
- 時に眼球がやや奥に引っ込んで見える(眼球陥凹)
※ただし、瞳孔の左右差(縮瞳)は暗い場所で目立ちやすく、気づかれにくいこともあります。
- 眼振や複視(物が二重に見える)
延髄周辺の前庭神経への影響により、眼球の動きが不安定になることがあります。
- 眼振(目が細かく揺れる)
- めまいに伴う視野のゆれ
- ごくまれに、眼筋麻痺による複視
診断
- MRIで延髄の異常を確認します。
- MRAや頸動脈エコー、心エコーなどで原因血管を調べます。
治療
- 急性期には脳梗塞としての治療(血栓溶解、抗血小板薬など)が行われます。
- 嚥下・発声・歩行・視覚のリハビリなどが長期的に必要なことがあります。
- ホルネル症候群自体の治療は不要なことが多いですが、眼瞼下垂が強い場合は眼科で相談することもあります。
ワレンベルグ症候群について(再確認)
ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)は、脳幹の一部である延髄の外側に小さな脳梗塞が起きたことで、いくつかの神経症状が出る病気です。
主な症状:
- めまい・ふらつき
- のどの違和感・飲み込みにくさ
- 声のかすれ
- 顔や体の片側の感覚の異常(温度や痛み)
- 片方のまぶたが下がる・瞳が小さくなる(ホルネル症候群)
- まっすぐ歩けない・ふらつく(小脳の影響)
目に関係する症状:
- 片側の瞼が下がる・瞳孔が小さくなる
- 眼振(目が揺れる)や、視野が揺れる感覚
- まれに物が二重に見えることも
これらの症状は、脳の損傷によるもので、眼そのものの病気ではありません。神経の回復やリハビリにより、時間とともに改善する場合もあります。
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