神経眼科

[No.4464] 毎日のコーヒーは心に良い? ― 英国46万人データが示した「適量」の意味

毎日のコーヒーは心に良い? ― 英国46万人データが示した「適量」の意味

私たちの日常に深く根付いている飲み物、コーヒー。眠気覚ましや気分転換のために毎日飲んでいる方も多いでしょう。一方で、「飲みすぎると不安になる」「メンタルに良いのか悪いのか分からない」と感じている方も少なくありません。今回ご紹介するのは、英国の大規模データを用いて、コーヒー摂取量と精神的な健康との関係を詳しく調べた研究です。

研究の背景

うつ病や不安障害などの精神疾患は、世界的に大きな健康問題となっています。これまで、コーヒーとメンタルヘルスの関係については多くの研究が行われてきましたが、「良い」「悪い」「関係ない」と結果はまちまちでした。その理由として、調査人数が少ないこと、短期間の観察にとどまっていること、インスタントや豆挽き、カフェインレスといった違いを区別していなかったことなどが挙げられます。また、男女差や、カフェインを分解する体質(遺伝子)の影響も十分に検討されていませんでした。

研究の目的

この研究では、毎日のコーヒー摂取量と、気分障害(うつ病など)やストレス関連障害との関係を明らかにすること、さらにその関係が性別やカフェイン代謝の遺伝的体質によって変わるのかを調べることを目的としました。

研究の方法

研究者らは、英国バイオバンクに登録された約46万人のデータを用い、平均13年以上にわたって追跡調査を行いました。参加者が日常的に飲んでいるコーヒーの量や種類をもとに、将来的に精神疾患を発症したかどうかを、医療記録(ICD-10コード)から解析しました。年齢、体格、生活習慣などの影響を統計的に調整しながら、コーヒー摂取量との関係を評価しています。

研究の結果

その結果、コーヒー摂取量と精神疾患の発症リスクとの間に「J字型」の関係があることが分かりました。これは、まったく飲まない人や、飲みすぎる人よりも、1日2〜3杯程度の中程度の摂取量の人で、気分障害やストレス障害のリスクが最も低かったという結果です。この保護的な効果は特に男性で強く見られました。一方で、カフェインを速く分解する体質かどうかといった遺伝的違いによる影響は、ほとんど認められませんでした。また、炎症に関わる体内物質が、コーヒーとメンタルヘルスの関係を仲介している可能性も示唆されました。

結論

この研究は、**「コーヒーは適量であれば心の健康にプラスに働く可能性がある」**ことを、大規模かつ長期のデータで示した点に意義があります。ただし、飲めば飲むほど良いわけではなく、ほどほどが大切であることも同時に示しています。


原典

Luo B, Xu X, Chen J, et al.

Daily coffee consumption and mental health outcomes: the role of sex differences and caffeine metabolism genotypes.

Journal of Affective Disorders. 2026;399:120992.

DOI: 10.1016/j.jad.2025.120992


眼科医・清澤のコメント

外来でも「コーヒーは体に悪くないですか?」と聞かれることがありますが、この研究は“適量ならむしろ良い可能性がある”ことを示しています。目の健康と同じく、生活習慣は極端を避け、無理なく続けられるバランスが大切だと改めて感じました。

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