清澤のコメント:昨日の日刊ゲンダイに掲載され、今朝ネット公開された私関連の糖尿病と目の関連の記事です。
① 糖尿病患者の「目の中」はどうなってしまうのか…血管のこぶ、網膜の出血やむくみ
糖の血中濃度が高くなる糖尿病。長く放置すると全身の血管がボロボロになり、さまざまな合併症を起こすことが知られている。なかでも視力低下の原因にもなる「網膜症」は、「腎症」「神経障害」と並び、糖尿病の3大合併症といわれる。ほかにも糖尿病が引き起こす目の病気には白内障や緑内障もある。なぜ、糖尿病は目に来るのか? 自由が丘清澤眼科(東京都目黒区)の清澤源弘院長に聞いた。
「目は酸素や栄養を必要とするために、網膜にはそれを供給するための毛細血管が張り巡らされています。高血糖によりその毛細血管がもろくなったり、詰まるなどすると、それをきっかけに目の中でさまざまな変化が生じます。それが糖尿病網膜症です」
糖尿病網膜症は3つの段階を経て進行する。初期は単純網膜症と呼ばれ、毛細血管に小さなこぶができる。そこから漏れ出た血液中のタンパク質や脂質が網膜に沈着すれば白い斑点ができるし、小さな網膜出血も多発する。
② 中期は増殖前網膜症と呼ばれ、毛細血管が詰まり、そこから染み出した水分が網膜内にたまり浮腫が生じる。このとき、視細胞が集中して視力を出す最も大事な黄斑部に異変が起きれば糖尿病黄斑症を発症する。この状態では、網膜に栄養や酸素が届かない無潅流域ができ、視力低下も起きることがある。
後期は増殖網膜症と呼ばれ、毛細血管が詰まって足りなくなった酸素や栄養を補うために、網膜から新たなもろい血管(新生血管)が網膜から硝子体にまでのびて大量に出血して、視力が低下することがある。並行して新生血管の周りには増殖膜が出来上がり、それが網膜を引っ張るので、牽引性網膜剥離を起こして、失明することもある。
「クリニックではあまりお目にかかりませんが、大学病院の外来では重症の網膜症の患者さんもまれではありません。原因不明の硝子体出血で、片眼の眼底がほとんど見えず、矯正視力も目の前に差し出された指の数もわからない患者さんに出会うこともありました。血糖値を調べたら、通常100程度の血糖が600もあるという症例も数年に一度はいました」
③ それでも患者には疲れやすさなど糖尿病への認識は乏しかったという。
「糖尿病の初期段階は視力低下などの自覚症状がないので異変に気づきません。ただし、糖尿病で目の不調を訴える人は診断から10年くらいの人が多く、20年で約60%が糖尿病網膜症を患い、そのうち15%は視力障害を起こすまで進行するといわれています」
■喫煙者は高リスク
糖尿病によって生じる目の病気は他にもある。白内障や緑内障だ。
「カメラのレンズにあたる水晶体が濁る白内障は、その原因の多くが加齢によるものです。しかし、糖尿病の人は水晶体が高血糖にさらされるため、浸透圧が変化して水晶体の中に水分が蓄積しやすく、濁りやすいのです」
糖尿病白内障は、水晶体の周辺部から濁り始める皮質白内障と水晶体を包む後ろの袋が濁る後嚢下白内障、その混合型がある。
④ 「皮質白内障は初期段階では気づきません。しかし、明るいところではまぶしく感じます。一方、後嚢下白内障は水晶体の中心部からすりガラス状に濁っているので、明るいところは最初からまぶしい半面、夜は瞳孔が開いて濁りのない水晶体の周辺部から光が入るので夜の方がモノが見やすく感じます。糖尿病による後嚢下白内障の進行は早く、数カ月で矯正視力が0.3程度に下がり手術が必要になることもあります」
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝える視神経に障害が起きて視野が狭くなる病気。進行は非常にゆっくりで両目で見ていると気づきにくい。健康な人でも40歳を越えると発症リスクが高まるが、糖尿病の人はさらに危険だという。
「糖尿病の人の眼圧は通常の人より高く、視神経にダメージを与えやすい。眼圧は房水と呼ばれる目の中を循環する液体の産生と排出のバランスによって決まります。糖尿病の人はそうでない人に比べて眼圧が高いとされています」
⑤ 日本でも茨城県筑西市在住で眼科手術歴のない40歳以上の男女6786人を対象にした研究では734人が糖尿病で、その人たちとそうでない人たちの眼圧の平均はそれぞれ、14.4㎜Hgと13.9㎜Hgで統計学的有意に眼圧が高かったという。さらに増殖性糖尿病網膜症では房水の排出路が新生血管でふさがれる血管新生緑内障がみられる。その予後は非常に悪くて、手術でもステントと呼ばれる特殊な器具の移植なども必要になる。
ちなみに喫煙はこうした目の病気の発症リスクをさらに高めるとされる。目は非常に繊細な臓器で、ニコチンによる血管収縮や酸素・栄養不足の影響を受けやすいからだ。
糖尿病の喫煙者はとくに目の管理には注意することだ。
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