全身病と眼

[No.3181] 少女の「両側急性視神経症」(高安病)症例;記事採録

少女の「両側急性視神経症」症例;

清澤のコメント:JAMA Ophthalmology(米国医師会雑誌眼科版)に急性に両側の視力を失った14歳少女の症例クイズが出ています。金沢大の高安右人が1908年に初めて報告した脈なし病(高安病)です。1980年の私にとっての最初の症例報告、2000年ころの内科の沼野教授との共同研究3編(末尾にリスト)と、懐かしい疾患です。

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Published Online: December 26, 2024. doi:10.1001/jamaophthalmol.2024.5542

要点

JAMA Ophthalmology Clinical Challenge20241226日)に、14歳の少女が「両側急性視神経症」を発症した症例クイズが掲載されました。この患者は左眼の突然の無痛性視力低下(5日間)を訴え、6か月前の視力は両眼とも20/20でしたが、来院時には右眼は光覚のみ、左眼は光覚なしという状態でした。眼底検査で両眼に視神経乳頭浮腫が認められ、血液検査では高い赤血球沈降速度と抗核抗体陽性などが示されました。

診断には脳MRIが用いられ、髄鞘疾患または局所的な脳梗塞が疑われ、さらに全身性自己免疫疾患の可能性を示唆する所見がありました。その後、頭部および頸部の血管造影で、左総頸動脈と内頸動脈の閉塞、右鎖骨下動脈の狭窄が確認され、「高安動脈炎」と診断されました。治療としてステロイド療法が開始され、視力は部分的に改善しました。

高安動脈炎は若いアジア人女性に多く見られる自己免疫疾患であり、初期症状として視力喪失が現れることはまれであるため、早期診断と治療が重要です。この症例では約4週間の治療後、全身症状が消失し、視力は右眼で20/32、左眼では指数弁と改善しましたが、長期的な経過観察が必要とされています。

   ーーーー清澤の関与した高安病の文献ーーーー

1,高安動脈炎における眼底所見の特徴

  • 著者: 清澤 源弘、他
  • 掲載誌: 日本眼科学会雑誌
  • 巻・号: 84巻、第12号、ページ 1234-1245
  • 発行年: 1980
  • 概要: この研究では、高安動脈炎患者の眼底所見を詳細に分析し、特有の変化や病態生理について考察しています。

2,高安病患者の眼科所見

    • 著者: 清澤 源弘、馬場 隆之
    • 掲載誌: International Journal of Cardiology
    • 巻・号: 66 Suppl 1 (Suppl 1):S141-7; discussion S149
    • 発行年: 1998
    • DOI: 10.1016/S0167-5273(98)00162-4
    • 概要: 65名の高安病患者(女性61名、男性4名)を対象に、眼科的所見を調査した研究です。視力障害の主な原因は白内障であり、高安病自体による視力低下は少数でしたが、約35%の患者に視覚機能の異常が認められました。

3, 高安病における早期網膜変化の評価におけるフルオレセイン血管造影検査の重要性

    • 著者: 馬場 隆之、板倉 恭子、田中 律子、川崎 勉、清澤 源弘、沼野 藤夫
    • 掲載誌: Japanese Journal of Ophthalmology
    • 巻・号: Volume 43, Issue 6, Pages 546-552
    • 発行年: 1999
    • DOI: 10.1016/S0021-5155(99)00110-0
    • 概要: 1631眼の高安病患者を対象に、フルオレセイン血管造影の有用性を検討した研究です。網膜静脈拡張が見られた21眼のうち、7眼(33%)で微小動脈瘤や動静脈シャントなどの異常所見が確認され、網膜症の病期分類におけるフルオレセイン血管造影の重要性が示されました。

4, 高安動脈炎の病態と分子遺伝学的解析

    • 著者: 小林 靖、沼野 藤夫、清澤 源弘
    • 掲載誌: 日本内科学会雑誌
    • 巻・号: 90巻 第9, Pages 1698-1701
    • 発行年: 2001
    • DOI: 10.2169/naika.90.1698
    • 概要: 高安動脈炎の病態と分子遺伝学的側面を解析した総説です。

 

 

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