「血をサラサラにする薬」は、多すぎても危ない?
―脳の病気と心臓の病気をもつ人のための新しい研究―
人の体の中では、血液が流れて体に必要な酸素を運んでいます。ところが、血がかたまりやすくなると、脳の血管がつまって「脳こうそく」を起こすことがあります。これを防ぐために使われるのが、血をサラサラにする薬(抗血栓薬)です。
この薬には2つのタイプがあります。
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抗凝固薬(こうぎょうこやく):心臓の中で血が固まるのを防ぐ薬。
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抗血小板薬(こうけっしょうばんやく):血管の中で血小板が集まるのを防ぐ薬。
では、この2つの薬を「いっしょに飲めば、もっとよく効く」のでしょうか?
日本の先生たちが、これを調べるために大きな研究をしました。
■ どんな研究?
全国の41の病院で、316人の患者さんに協力してもらいました。
みんな、脳こうそくを起こしたことがあり、心房細動(しんぼうさいどう:心臓のリズムが乱れる病気)と動脈こうか(血管がかたくなる病気)を持っていました。
参加した人たちを2つのグループに分けました。
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① 抗凝固薬だけを飲むグループ
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② 抗凝固薬と抗血小板薬の2種類を飲むグループ
そして、2年間、どんな違いがあるかを調べました。
■ 結果はどうだったの?
なんと、2種類の薬を使っても脳こうそくが減らなかったのです。
それどころか、出血のトラブル(血が止まりにくい、鼻血やあざなど)が2倍くらい多くなっていました。
つまり、「薬をふやしても、よくならないどころか、かえって危ない」ということがわかったのです。
■ どうすればいいの?
この研究の結論はとてもシンプルです。
「抗凝固薬だけを使うほうが安全で、出血も少ない」
とくにお年寄りでは、出血すると転んだり、目や脳の中で血が出ることもあります。だから、薬は“多ければいい”ではなく、“ちょうどいい量”が大事なのです。
■ まとめ
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脳こうそくを防ぐ薬には2種類ある。
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2種類をいっしょに使っても効果は変わらない。
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出血がふえるので、1種類で十分安全。
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薬を飲むときは、必ずお医者さんに相談しよう。
出典
Okazaki S, Tanaka K, Yazawa Y, et al.
Optimal Antithrombotic Therapy for Ischemic Stroke With Concomitant Atrial Fibrillation and Atherosclerosis: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Neurology. Published online October 6, 2025. DOI: 10.1001/jamaneurol.2025.3662
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