清澤のコメント:強い近視がある患者さんの眼底病変について東京科学大学に紹介しましたら、此の病名が示されました。
点状脈絡膜内層症(Punctate Inner Choroidopathy, PIC)とは?
点状脈絡膜内層症(PIC)は、比較的まれな目の病気で、特に若い近視の女性に多く見られます。この病気では、網膜の下にある「脈絡膜」という組織の内側に、小さな黄色っぽい病変(ダメージを受けた部分)がたくさんできます。これらの病変は、特に目の中心部分(後極)にできることが多いです。
他の炎症性の目の病気と違い、PICでは目の前の部分(前房)や、ゼリー状の部分(硝子体)には大きな炎症は起こりません。
📖 出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
主な症状
- 視界がぼやける
- 視界の一部に暗い部分(見えにくいところ)ができる
- 光がチカチカして見える(光視症)
これらの症状は、突然出てくることが多く、両目に同時に現れることもあります。また、視界に「浮遊物(黒い点や線が漂って見える)」が見えたり、物が歪んで見えたりすることもあります。
📖 出典: macularsociety.org
原因について
PICのはっきりした原因はまだ分かっていませんが、体の免疫システムが誤って自分の目の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種ではないかと考えられています。この免疫反応が原因で、網膜や脈絡膜に炎症が起こります。
📖 出典: macularsociety.org
合併症(病気が進行すると起こること)
PICの患者さんで特に注意が必要なのは、「脈絡膜新生血管(CNV)」という異常な血管ができることです。これが起こると、急に視界の中心が見えにくくなったり、視力が低下したりする可能性があります。放っておくと、網膜の下に瘢痕(傷跡)ができ、元に戻らない視力障害を引き起こすことがあります。
そのため、定期的に目の検査を受けて、CNVができていないかを早めにチェックすることが大切です。
📖 出典: en.wikipedia.org
診断方法
PICは、目の検査を詳しく行うことで診断されます。特に、眼底検査では網膜の特徴的な病変を確認できます。また、より詳しく調べるために、以下のような検査が行われることがあります:
- 蛍光眼底造影検査(FA):網膜や脈絡膜の血流を調べる
- 光干渉断層計(OCT):網膜の構造を詳しく確認する
- 網膜電図(ERG):網膜の働きを調べる
📖 出典: eyewiki.org
治療法
治療は、症状の程度や合併症の有無によって異なります。
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経過観察
→ 視力に大きな影響がない場合は、定期検査をしながら様子を見ることもあります。 -
ステロイド治療
→ 炎症を抑えるために、ステロイド(飲み薬や点滴、目の周囲への注射)を使うことがあります。 -
免疫抑制剤の使用
→ ステロイドが効かない場合や、副作用が強い場合に使われることがあります。 -
抗VEGF療法(注射)
→ CNV(異常な血管)ができた場合に、抗VEGF薬を目の中に注射して血管の増殖を抑える治療を行います(ベバシズマブ、ラニビズマブなど)。 -
光線力学療法(PDT)
→ 場合によっては、特殊なレーザー治療が行われることもあります。
📖 出典: pmc.ncbi.nlm.nih.gov
まとめ
- PICは、若い近視の女性に多い目の病気で、網膜の下に小さな病変ができるのが特徴です。
- 視界がぼやけたり、光がチカチカ見えたり、暗い部分が出ることがあります。
- 原因は免疫異常の可能性があり、脈絡膜新生血管(CNV)ができると視力に大きな影響が出ます。
- 治療はステロイドや抗VEGF注射など、症状に応じて選択されます。
この病気は珍しいですが、適切な治療を受けることで進行を防ぐことができます。定期的な検査と早めの対処が大切です。
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