「近視は抑制できる。子供の内だからこそ」と伝えたい:記事抄出
清澤のコメント:アトロピン点眼薬「リジュセアミニ」が参天製薬から発売され、日本眼科医会でも眼科医向けにその解説が発表されました。当医院でも社員の方にこの薬剤とその取扱いに対する説明を受けるなど導入に向けた準備を進めています。さて、国際医薬品情報2025年4月14日号に栗原逸平氏(参天製薬取締役執行役員)によるインタビュー記事が収載されていました。この記事の内、アトロピン製剤に関する部分を参考に、私(清澤)が眼科医の読者として市民向けに診療・啓発上の注意点を含めて記事を要約した2次情報です。参考にして頂けたら幸甚です。
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子どもの近視は「進行抑制できる」時代に
— アトロピン点眼薬「リジュセアミニ」発売と今後の課題 —
2025年4月、参天製薬は日本で初めてとなる近視の進行抑制を目的とした医療用点眼薬「リジュセアミニ点眼液0.025%」(アトロピン)を発売しました。これまでの近視治療が「見えるようにする」対症療法であったのに対し、この薬は「近視の進行そのものを抑える」初の薬剤として注目されています。
自由診療での提供とその背景
本剤は保険適用外の自由診療となります。その理由について、当局は近視を「疾患」とは認めつつも、眼鏡やコンタクトレンズがこれまで自費で対応されてきた経緯を考慮したとのことです。参天製薬としては本来、保険収載を望んでいたものの、自由診療の形であっても「必要とする子どもにきちんと届けたい」との姿勢を示しています。
医療機関側の準備と診療上の注意点
自由診療であるため、眼科医療機関側にもいくつかの準備や留意点が求められます。混合診療と誤解されないよう、診療オペレーションの整備が必要です。例えば、以下のような対応が考えられます:
- 保険診療とは別枠での自由診療スキームの明示
- 自由診療の価格・頻度について事前の説明と同意書の取得
- 定期的な安全性確認の体制整備(初回1週間~1カ月後、以後3~6カ月毎)
価格の目安としては、1日1回使用で1か月分(30本入り)が税込4380円程度とされており、各施設での設定が可能です。これは並行輸入での使用価格と同等水準です。
投与対象と期間、効果について
リジュセアミニは5歳から15歳までの小児に対して3年間の治験データがあり、眼球の成長が続く期間の使用が基本とされます。つまり、投与期間は個人差がありますが、眼軸の伸びが落ち着く年齢(14~16歳前後)までがひとつの目安です。治療の開始と継続判断は、屈折値の進行ペースや眼軸長の計測などを参考に、眼科医が慎重に行う必要があります。
情報提供と市民の理解促進
現在、一般市民の多くは「近視が進行するのは仕方がない」と考えており、抑制できるという認識が浸透していません。このため、眼科医からの丁寧な情報提供が極めて重要です。
学校検診で近視の疑いがあったお子さんは、多くの場合保護者とともに眼科を受診します。このタイミングで眼科医が「進行抑制治療の存在」を紹介できるかどうかが、啓発と導入の分かれ目です。保護者が「今しかできない治療」として関心を持てるよう、簡潔かつ根拠に基づく説明が求められます。
小児科との連携・広告展開について
本薬は眼科医以外でも処方可能な医薬品ですが、参天製薬としては現時点では眼科を主軸とした展開に集中しています。DTC(Direct to Consumer)広告、すなわちテレビCMなどの広報活動も計画中ですが、まずは眼科での受け入れ体制が整う半年~1年後を目処に展開する方針です。
今後の課題と医師の役割
自由診療であるがゆえに、経済的・制度的なハードルは残ります。しかし、患者さんやご家族が「未来の眼病を予防するための選択肢」として正しく理解すれば、関心と納得を得やすいと考えられます。
参天製薬では、今後も学会や医会と連携し、眼科医への情報提供と実施体制の支援を強化していくとしています。「子どものうちだからこそできる近視進行の抑制」を、多くの家庭が理解し、治療につなげられるような社会的取り組みが期待されます。
追記:
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