成人の視力検査及び眼鏡処方に関する手引きの抄出の3回目として、第5章の眼鏡処方の実際(眼病)180から193の要点を優しくまとめてみました。元の文が長大で、詳しい注記や処方例も記載されているのですが、通読しても全貌がよく見えませんでした。こうして要点を1500文字に纏めてみると、その概要が見えてきます。以後は目的に必要に応じて、原本のその項目に戻ってみるのが良いでしょう。遮光眼鏡処方に対する網膜色素変性などの病名制限が既に無くなっているなどの有用な情報も見受けました。
ーーーーーーー
5.眼鏡処方の実際(病眼)
1)角膜疾患
(1)角膜疾患の光学的特徴 角膜疾患による視機能低下の主因は、収差や散乱であり、疾患ごとに異なる。円錐角膜では角膜不正乱視が主因、顆粒状角膜ジストロフィでは混濁による散乱が主因となる。ドライアイでは涙液層の不安定化が視機能に影響する。
眼鏡処方に際し、他覚的屈折検査は困難であり、自覚的屈折検査の技量が求められる。適切な補正が難しい場合は単焦点眼鏡の使用、ハードコンタクトレンズ、ロービジョンケア、または手術適応を検討する。
(2)角膜形状異常(収差)が主因の場合 円錐角膜や角膜移植後では角膜不正乱視が強く、眼鏡による矯正が困難なことがある。角膜形状解析を用いて正乱視と不正乱視を分離し、円柱レンズで補正する。視機能低下が著しい場合は、眼鏡装用よりもハードコンタクトレンズの適応を考慮する。
(3)角膜混濁(散乱)が主因の場合 角膜ジストロフィや瘢痕による混濁では、コントラスト感度の低下や羞明が生じる。遮光眼鏡が有効であり、患者のライフスタイルに応じた選定が重要。
(4)ドライアイの場合 涙液層の不安定性が屈折値の変動を引き起こし、適切な眼鏡処方を困難にする。治療後に眼鏡処方を行うのが望ましく、遮光眼鏡が羞明やコントラスト感度低下の改善に有効な場合がある。
(5)屈折矯正手術後の場合 LASIK後は原則正視となるが、近視進行や過矯正、乱視により眼鏡が必要となることがある。屈折検査の精度が低下するため、慎重な測定が求められる。夜間視機能の低下を訴える場合は、暗所での視力評価が必要。RK術後では屈折の時間変動が大きく、眼鏡処方の時間帯に注意する。
2)偽水晶体眼
(1)眼鏡処方の概要 眼内レンズ(IOL)挿入眼では、術後屈折の安定を確認した上で眼鏡処方を行う。用途やライフスタイルに応じて最適な矯正方法を選択する。
(2)手術後の屈折変化と処方時期 術後1~2週間で屈折が安定するが、老視矯正IOLでは脳の順応に時間がかかるため、処方時期を慎重に見極める。
(3)遠用眼鏡処方 単焦点IOLでは通常の屈折検査で適切な処方が可能。老視矯正IOLでは他覚的屈折値が自覚的屈折値とずれることがあり、慎重な測定が求められる。
(4)老視矯正IOLの加入屈折力決定 遠用矯正に加え、必要に応じて近用の加入度数を決定する。焦点深度拡張型IOLでは、近用加入を減らせる場合がある。
3)調節障害
(1)調節衰弱 調節力の低下により近見視力が低下する。スマホ老視を含む。累進レンズの処方や近見作業時間の管理が重要。
(2)調節けいれん 毛様体筋の過緊張による過矯正状態。調節力検査で変動が大きい。ストレス軽減や点眼治療を併用し、患者が楽に感じる眼鏡を処方。
(3)調節麻痺 調節機能の完全な喪失。原因疾患の治療が優先されるが、遠用または近用眼鏡の処方が必要。
4)網膜疾患
(1)網膜疾患における眼鏡処方 黄斑疾患では眼鏡による補正が困難な場合が多いが、低矯正眼鏡やロービジョン補助具の導入を検討する。
(2)病的近視の黄斑症 近視性黄斑症の進行に伴い、視機能が低下する。低矯正眼鏡や老視矯正レンズの選択が重要。
(3)遮光眼鏡の選定 羞明やコントラスト感度低下がある患者には、適切な色調と透過率を選定し、実際の環境で試用する。
遮光眼鏡の選定では、まぶしさ軽減効果やコントラスト改善を確認し、必要に応じて貸し出しを行う。身体障害者手帳を持つ患者には補装具費支給の可能性がある。
まとめ
角膜疾患では収差や散乱に応じた眼鏡処方が求められ、偽水晶体眼では術後の屈折安定を確認することが重要。調節障害は適切なレンズ選択と生活指導が必要であり、網膜疾患ではロービジョンケアを考慮する。遮光眼鏡は羞明の軽減に有効であり、慎重な選定が求められる。
コメント