40歳過ぎの成人にオルソケラトロジーを行う場合のメリットと注意点とを考えてみましょう。オルソケーで遠方視力が出ても40歳以上であれば、眼鏡などで近方矯正を加える必要がありそうにも思われますが?
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答:40歳を過ぎた成人にオルソケラトロジー(以下、オルソK)を適用する場合には、慎重な適応判断と明確な説明が必要です。以下に、メリットと注意点(特に老視との関係)を整理して説明します。
■ 40歳以降のオルソケラトロジー:メリット
- 裸眼での遠方視力の確保
- 日中にメガネやコンタクトを装用せずに遠くがよく見えるのは、運転やスポーツ、仕事上で便利。
- ドライアイ対策になる可能性
- ソフトコンタクトによる乾燥感が強い方には、夜間装用のオルソKは日中の異物感軽減に有利です。
- 角膜に可逆的な変形を用いるため手術不要
- レーシックなどの屈折矯正手術を避けたい中高年の方にとって非侵襲的な選択肢になります。
■ 注意点と限界(老視との関連)
- 老視による近方視力の低下
- 40歳を過ぎると調節力が低下してくるため、オルソKで遠方がよく見えても近くが見えにくくなるのが一般的です。
- そのため、
- 老眼鏡(リーディンググラス)を併用する、
- モノビジョン(片目は遠方に合わせ、反対眼を近方に合わせる)設計のオルソKレンズを用いる、
などの調整も考えられます。
- 角膜の可塑性の低下
- 高齢になると角膜の柔軟性が低下し、オルソKの矯正効果が出にくい、あるいは安定しにくくなることがあります。
- ドライアイ・角膜障害リスク
- 中高年では涙液分泌が低下しているケースも多く、夜間の角膜障害リスクに注意が必要です。装用前には涙液量、角膜形状、眼表面の健康状態を十分に確認します。
- 装用・手入れの継続が必要
- 老眼世代では、レンズの着脱や洗浄に苦手意識を持つ方もおり、自己管理の適応も評価すべきです。
■ 患者さんへの説明
「このオルソケーレンズを使えば昼間は裸眼で遠くがよく見えるようになることが期待されます。ただ、40歳を過ぎてくると誰でも近くが見づらくなる老眼が始まりますので、近くを見るときは老眼鏡を併用していただく必要があります。また、目の表面の状態や涙の量によっては向かない場合もありますので、詳しく検査をしてからご案内します。それらを考えると上記のメリットに期待してオルソケーを試すか、あるいは眼表面の乾燥に対する処置を考えながら通常のソフトコンタクトレンズ(あるいは遠近両用のソフトコンタクトレンズ)を試すのも一法かもしれません。
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