こどものアトピー性皮膚炎と関連する眼症状について
1) こどものアトピー性皮膚炎がQOLを低下させる実態
アトピー性皮膚炎(AD)は慢性的なかゆみや皮膚の炎症を伴う疾患で、こどもの生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。かゆみによる夜間の睡眠不足は、日中の集中力や学習能力を低下させる要因となります。また、皮膚の見た目に対する羞恥心から、社会的活動を避けることが多くなり、心理的ストレスや不安を抱えるケースも少なくありません。さらに、親子間のストレスが増加し、家族全体のQOLにも悪影響を及ぼします。
2) 子供の皮膚は乾燥しやすい実態とその原因
こどもの皮膚は成人に比べて皮膚バリア機能が未熟であり、水分保持能力が低いため、乾燥しやすい傾向があります。また、皮脂腺や汗腺の発達が不十分であるため、外部刺激や乾燥した環境に対して敏感です。特に冬季は湿度が低くなるため、乾燥が悪化し、アトピー性皮膚炎の症状を増悪させることがあります。
3) アトピー性皮膚炎のスキンケアと推奨される治療法
アトピー性皮膚炎のスキンケアは、保湿と炎症のコントロールが重要です。
-
スキンケアの具体例
-
保湿剤の使用:皮膚の乾燥を防ぐために、保湿剤を適切に塗布します。
-
医師が処方すべきもの:ヘパリン類似物質、尿素製剤、セラミド配合の軟膏。
-
薬局で購入できるもの:市販のワセリン、ヒルドイド類似クリーム、セラミド配合クリーム。
-
使用量:1回あたり500円玉大程度を、全身に均一に塗布します。入浴後すぐに使用することで効果が最大化されます。
-
-
-
炎症を抑える治療
-
ステロイド外用薬:症状の重症度に応じて、適切な強度のステロイドを使用します。医師の指示に従い、長期間の使用を避けます。
-
タクロリムス軟膏(非ステロイド性外用薬):顔や首など敏感な部位に使用可能です。
-
-
生活指導
-
肌を傷つけないように、爪を短く保ちます。
-
入浴時は石鹸を控えめに使用し、洗浄後はすぐに保湿します。
-
綿素材の衣類を選び、汗をかいたらこまめに着替えます。
-
4) アトピー性皮膚炎に伴う眼症状と治療法
アトピー性皮膚炎のこどもでは、以下のような眼症状がみられることがあります。
-
アトピー性角結膜炎(AKC)
-
症状:強いかゆみ、結膜充血、涙目、視力低下。
-
治療法:
-
ステロイド点眼薬(短期的に使用)。
-
抗アレルギー点眼薬(長期管理に使用)。
-
重症例では免疫抑制剤の点眼が考慮されます。
-
-
-
眼瞼炎
-
症状:眼瞼のかゆみ、腫れ、赤み。
-
治療法:
-
マイボーム腺のケア(ホットタオルで温める)。
-
軽度のステロイド軟膏。
-
-
-
角膜潰瘍
-
症状:視力低下、痛み、異物感。
-
治療法:
-
感染を伴う場合は抗菌薬点眼薬を使用。
-
非感染性の場合はステロイド点眼と保湿剤の併用。
-
-
-
白内障
-
アトピー性皮膚炎の長期経過により、若年性白内障を発症することがあります。
-
治療法:早期発見のために定期的な眼科受診を推奨。
-
おわりに
アトピー性皮膚炎のスキンケアと適切な治療は、皮膚や目の症状の軽減に役立ちます。こどものQOLを向上させるためには、医師と親の連携が不可欠です。また、眼症状を早期に発見し適切に対処することで、合併症による視力障害を予防できます。日々のケアに加え、定期的な眼科受診を通じて全身状態を管理することが重要です。
注:日本医師会:健康ぷらざ585は子供のアトピー性皮膚炎の悪化予防を論じていました。
コメント