小児の遠視性乱視に対する眼鏡の処方について:
患者さんの親に説明するために、小児の遠視性乱視に対して、眼鏡処方をする場合にどの程度の遠視があれば眼鏡処方をするのが普通か、またその注意点などの要点を記載します。
小児の遠視性乱視に対する眼鏡処方の基準と注意点
眼鏡処方を検討する基準
小児における遠視性乱視に対する眼鏡処方は、以下の基準を参考にすることが一般的です。ただし、個々の症例や年齢、視力発達の状況、眼位の影響などを考慮する必要があります。
- 遠視の程度
- +3.00D(ジオプトリー)以上の遠視がある場合、特に注意が必要です。これに乱視が加わると、視力の発達に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
- +2.00D以上の遠視があり、さらに乱視(1.50D以上)が併存している場合は、眼鏡処方を検討します。
- 視力発達への影響
- 遠視や乱視が視力発達に影響を与える場合(弱視のリスクがある場合)や、学校での視力検査で異常が見つかった場合。
- 視機能が未熟な小児では、両眼視や調節能力の発達が遅れる可能性があります。
- 斜視のリスク
- 遠視性乱視が内斜視を誘発している場合には、早期の眼鏡処方が必要です。
注意点
眼鏡処方を行う際には、以下の点に注意してください。
- 正確な検査
- サイプレジンなどの調節麻痺下の屈折検査を行い、正確な屈折値を測定することが重要です。これにより、調節過剰による誤差を防ぎます。
- 処方量の決定
- 遠視を完全矯正するのではなく、年齢や調節力を考慮して適切な度数を処方します。
- 乱視が視力にどの程度影響を及ぼしているかを確認し、必要に応じて矯正度数を調整します。
- 両眼視機能の評価
- 眼位(斜視)や両眼視機能を評価し、遠視矯正の影響を確認します。
- 親への説明
- 視力発達や乱視の影響について保護者に十分に説明し、眼鏡の重要性を理解してもらいます。
- 子どもが眼鏡を嫌がらないよう、フレームの選び方や装用指導も行います。
- 経過観察
- 適切な装用指導を行い、定期的な受診を促します。特に、小児では成長に伴い屈折値が変化するため、6か月から1年ごとの視力・屈折検査が必要です。
まとめ
- +3.00D以上の遠視、あるいは**+2.00D以上の遠視性乱視**がある場合は眼鏡処方を検討。
- 視力発達、斜視の有無、調節力を考慮して適切な処方を行う。
- 正確な検査と経過観察、保護者への説明が重要です。
患者やその家族に分かりやすく説明する際には、遠視や乱視の仕組み、眼鏡が視力発達にどのように役立つかを具体的に伝えることを心がけてください。
参考文献:→(リンク)日本眼科学会:小児の眼鏡処方に関する手引き:2024/10/08
小児の眼鏡処方に関する手引き、小児眼鏡処方手引き作成委員会
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