小児の眼科疾患

[No.3861] 「イチケイのカラス」第2話 ― 揺さぶられっこ症候群をめぐる法廷劇

「イチケイのカラス」第2話 ― 揺さぶられっこ症候群をめぐる法廷劇

フジテレビ系ドラマ「イチケイのカラス」第2話(2021年4月12日放送)をネットフリックスで見ました。この番組では、乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome, SBS) をめぐる裁判が描かれました。司法の場における医学的判断の難しさや、裁判官の葛藤がテーマとなり、大きな反響を呼んだ回です。以下にストーリーを簡潔にまとめます。


あらすじの概要

物語は、人気料理研究家の深瀬瑤子(前田敦子)が1歳半の娘を揺さぶり、傷害を負わせたとして起訴された裁判から始まります。1審で有罪判決が下されましたが、控訴審を経て地裁に差し戻されました。しかもこの事件は、最高裁事務総長の息子が関わった「要注意案件」でもありました。

裁判長・入間みちお(竹野内豊)らは再審理に臨みますが、法廷では医師・足達(金井勇太)が「10人の専門医がいたら10人とも同じ診断をする」と証言。これに対し、みちおは職権で10名の専門家を呼び出し、意見を聴取する大胆な行動に出ます。

すると、専門家の一部から「症状が出るまでに数日の幅がある」との新証言が飛び出し、「必ずしも揺さぶりだけが原因ではない可能性」が浮上します。さらに被告の周囲を調査すると、託児所での事故の可能性や、被告を巡る人間関係のもつれも明らかになっていきました。

この裁判を通して、「SBSという診断は絶対なのか」「真実を知るのは誰か」という根源的な問いが提示されます。入間は「裁判官は人を裁いているようで、実は裁かれている」と語り、真実を見極める難しさと責任の重さを強調しました。


揺さぶられっこ症候群とは?

揺さぶられっこ症候群(Shaken Baby Syndrome, SBS) とは、乳幼児を強く揺さぶったことで脳に損傷が生じるとされる状態を指します。典型的には「急性硬膜下出血」「眼底出血」「脳の腫れ」が三徴候とされますが、実際には転倒など他の要因でも似た所見が起こり得るため、診断は容易ではありません。医学的議論が続いているテーマであり、法廷で争点になることも多いのです。


眼科医清澤のコメント

私(清澤)も、実際の揺さぶられっこ症候群裁判に昨年から関わり、被告人側の依頼で意見書を提出しています。今回のドラマでは「急性硬膜下出血」のみが争点であり、実際の裁判でしばしば注目される「眼底出血」は取り上げられませんでした。

しかし、このドラマを通じて、日本社会でもこの症候群が重要な議論の対象となっていることを、多くの方に知っていただけたのではないかと思います。

日本の刑事裁判は海外と比べて有罪率が非常に高く、起訴されるとほぼ有罪になるといわれています。それだけに、SBS関連の裁判で最近無罪判決が続いていることは異例であり、検察側も起訴にあたって一層慎重になっていると耳にしています。

医師の立場から見ても、SBSの診断は単純ではなく、医学と法が交差する難しい領域です。ドラマ「イチケイのカラス」第2話は、その複雑さと現実に通じる問題意識を視聴者に伝える良い機会となったと感じます。


出典

  • フジテレビ公式サイト「イチケイのカラス」第2話ストーリー

  • 各種ドラマレビュー記事

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