映画で問う「揺さぶられる正義」――SBS(乳幼児揺さぶられ症候群)と冤罪問題
清澤のコメント;早速本日9月20日12;20から早速東中野の映画館ポレポレにこの映画を見に行きました。冒頭から知り合いの女性脳外科医が画面に写り込んでおりました。また話の中心では一人の刑事事件を扱う男性の秋田真志弁護士と、刑事訴訟法研究者で南山大学の法学部教授女性教授の笹倉香奈先生のSBS検証プロジェクトでの活躍が描かれていました。彼らの活動がこれほどにまでに大変で、且意義のあることであることを改めて知り、大変驚きました。現在までに乳児虐待事件で得られた無罪判決は、殆んど無罪判決の無い日本の刑事事件で、2018年以降13件(うち2例は公判中)に及ぶそうです。さらに、医師が意見書を提出して証言に立った場合、明確に解ることを述べるうちに、確信的にはわからぬことにまで言及して、墓穴を掘るケースがある事にも震撼させられました。私も秋田弁護士の依頼で弁護側での意見書を提出しておりを12月ころの証言が予定されていますが、その際も発言は慎重にしたいと思っています。
ーーー新聞記事要約ーーー
近年、乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome: SBS)を理由に逮捕・起訴された保護者が、裁判で無罪となるケースが相次いでいます。なぜ無実の親が虐待の加害者として逮捕され、実名報道までされてしまうのか。刑事司法と報道の在り方を問いかけるドキュメンタリー映画「揺さぶられる正義」が公開されました。制作したのは関西テレビのディレクターであり、弁護士資格も持つ上田大輔さん(46)。彼は<贖罪と覚悟の物語>と銘打ち、自らの経歴も重ねながら冤罪の構造に迫ります。
- SBS理論とは何か
SBSは、
- 硬膜下血腫
- 眼底出血
- 脳浮腫(脳の腫れ)
この3つがそろえば外傷がなくても虐待を疑う、という医学的理論です。厚生労働省の虐待対応マニュアルにも記載され、2010年代以降、疑われた親が相次いで逮捕されました。ところが世界の医学論文では、この理論の根拠に疑問が呈されており、日本の「常識」が国際的には遅れている可能性も指摘されています。
- 無罪判決の増加と背景
2018年以降、日本では少なくとも13件の無罪判決が出ています。弁護士や研究者が立ち上げた「SBS検証プロジェクト」が背景にあり、SBSの医学的根拠を再検討する動きが進んできました。しかし一方で、SBSが疑われた親は「三重の悲劇」に直面します。
- 自分の子が大けがを負ったり、死亡したりもする
- 児童相談所に子供が保護(隔離)される
- 親自身が逮捕・長期勾留され、社会的信用を失う
冤罪の可能性が高いにもかかわらず、家族ごと人生が崩壊してしまうのです。
- 報道のあり方も問われる
もう一つの焦点は「報道」。逮捕直後に実名・顔写真を公表する報道は、無罪判決が出ても「犯人扱い」の印象を世間に残します。特にテレビは逮捕前の直撃映像を「スクープ」として流しがちで、視聴者に先入観を植え付ける効果が強いのです。
報道各社は改善を進めているといいますが、現場の「競争構造」は変わっていません。上田監督自身も「我々の報道は変わったのか?」と問われれば「まだ変わっていない」と認めざるを得ませんでした。ただし、匿名報道を選択した事例もあり、この映画が「報道を変える契機」になることを期待しています。
- 上田監督の歩みと作品の意義
上田さんは学生時代に「冤罪を救う弁護士」を志しましたが、日本の刑事司法の現実に失望し、弁護士資格を持ったままテレビ局に入社。報道の世界で「法律の知識を生かしてこそ伝えられることがある」と考え、記者に転身しました。
彼は長年SBS事件を追い、家族や医師に粘り強く取材し、すでに検証番組を3本制作しています。本作はその集大成であり、「冤罪を生む構造」と「報道の暗部」を二重に描き出した作品です。
まとめ
SBSをめぐる問題は、「児童虐待を防ぐ正義」と「冤罪をなくす正義」が真正面からぶつかる難しい課題です。医療、司法、報道の三者がどう向き合うかが社会全体に問われています。
映画「揺さぶられる正義」は、その葛藤と矛盾を真正面から描き、観る人に「私たちはどちらを優先すべきか」を問いかけてきます。冤罪が続発する現状を変えるためには、医学の見直しと報道の姿勢転換、そして司法制度の改善が必要です。
📌 上映情報
本作は関西テレビ製作のドキュメンタリー映画として公開。
<贖罪と覚悟の物語>を掲げる本作は、観客一人ひとりの心と、この社会を揺さぶることを目指しています。
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