小中学生の近視進行を防ぐ3つの柱
―戸外活動・低濃度アトロピン・オルソケラトロジー―
(親世代・祖父母世代のかた向けに)
① 戸外活動を1日2時間
戸外活動は現在、世界的に最も確実性の高い近視進行予防策とされています。理由は、屋外の明るい光によりドーパミンという物質が網膜から分泌され、眼軸(眼の奥行き)が伸びにくくなるためです。スポーツである必要はなく、散歩・外遊び・日向ぼっこでも十分効果があります。
実際の方法としては、学校の休み時間+放課後で合計2時間を目安に屋外で過ごす生活習慣をつくります。特に低学年から始めると効果が高いとされ、スマホ・ゲームの連続使用時間を決めて屋外活動とのバランスを取ることが大切です。
費用は不要で、安全に行える最も経済的な方法です。
効果は統計的に「年間の近視進行を約30〜40%抑える」とされ、強度近視への移行を減らすことが期待できます。継続が最も重要で、家族の声かけが成功のポイントになります。
② 低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ)
低濃度アトロピンは、海外では長く研究されてきた薬で、日本でも保護者の関心が高まっています。アトロピンは通常、瞳を広げる薬として知られていますが、低濃度では瞳孔への影響がほとんどなく、眼軸の伸びを抑える作用だけを利用します。
実際の方法は、就寝前に片眼1滴を毎日点眼するだけです。まぶしさや近見のピント調節に影響がほとんどないため、小学校低学年からでも使用しやすい治療です。
費用は自費で、1か月あたり2,000〜3,500円程度が一般的です(医院により異なります)。通常は1〜3か月に1度の通院で、屈折・眼軸長の測定を行います。
効果は海外データで「年間の近視進行を約50〜60%抑制」と報告され、屋外活動と併用するとさらに良好です。副作用が少なく、安全性の高さが世界的に評価されています。
③ オルソケラトロジー
オルソケラトロジー(オルソK)は、夜寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装着し、角膜をわずかに平らにして日中の裸眼視力を改善する方法です。
実際の方法は、毎晩レンズ装用→朝外す、という流れで、日中は裸眼で生活できます。小学校高学年〜中学生で協力の得られるお子さんに向いています。
費用は自費で初年度12〜18万円前後、2年目以降は年間メンテナンス費が3〜6万円程度です(医院により差があります)。半年〜1年ごとに検診を行い、角膜の健康状態を確認します。
効果は「眼軸伸長を平均30〜50%抑える」と多数の研究で示され、裸眼で生活できるという利点も大きな魅力です。ただし定期検査・レンズ管理が不可欠で、親御さんの協力が結果に直結します。
総括
近視進行を抑えるためには、①戸外活動、②低濃度アトロピン、③オルソケラトロジーという3本柱を、年齢や生活に合わせて組み合わせることが大切です。最も基本は「戸外活動2時間」で、これは全ての子どもに推奨できます。そこに、より積極的な予防として低濃度アトロピン、さらに視力改善も兼ねたい場合はオルソケラトロジーを追加する考え方がよく用いられます。近視は一度進むと元には戻らないため、早期からの予防が将来の強度近視や眼の病気を減らす鍵となります。ご家族で「無理なく続けられる方法」を一緒に探し、長く続けることが何より重要です。



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