「TACO(タコ)戦略」って何?――ウォール街と“言葉の読み方”から学ぶ、医療にも通じる観察力
確かにトランプ大統領には振り回されていますね。「うろたえるな」とでも訳してみましょうか?今日は少し変わった話題――“TACO”という経済の世界の流行語――を取り上げたいと思います。目の病気と関係なさそうに見えるかもしれませんが、「人の発言をどう読み解くか」「不安にどう向き合うか」という点で、私たちの医療判断にも共通するところがあると感じています。
「TACO」とは何か?
この“TACO”という言葉、実はあのアメリカのトランプ前大統領をめぐって、最近ウォール街(米国の金融業界)で生まれた新語です。
正式にはの頭文字をとったもの。少し皮肉が効いています。
どういう意味かというと、「トランプ氏は強い言葉で脅すようなことを言って市場を揺さぶるけれど、実際には土壇場で方針を引っ込めることが多いので、その発言に過剰に反応して慌てるべきではない」という考え方です。
なぜ生まれたのか?
例えば、トランプ氏が「中国製品に145%の関税をかける!」と発言した翌日、株価が大きく下がることがあります。ところが、数日後には「やっぱり100%に下げる」と方針を変える。すると、今度は株価が元に戻る。
そんな経験が繰り返される中で、投資家たちは学んだのです――「発言をそのまま受け取るのではなく、“この人は本当にやる気なのか”を冷静に見極めよう」と。
そして生まれたのが「TACO戦略」。「どうせ尻込みするのだから、売り急ぐな」という投資行動の合言葉です。
医療にもある「TACO的状況」
この“読み取る力”は、私たちの医療現場にも通じるところがあります。
たとえば、初診の患者さんがインターネットで検索して、
「網膜剥離かもしれない」「緑内障で失明するのでは」と強い不安を抱いて来院されることがあります。
確かにネット上には、専門的な言葉や怖い話があふれています。でも実際に検査してみると、
- 目の異常は軽微な飛蚊症だった
- 緑内障の進行はごく軽度だった
というケースも少なくありません。
このとき、“不安”や“言葉の強さ”だけに反応して大きく動くのではなく、冷静な情報に基づいて判断する姿勢が大切になります。
医療者にとっての“TACO”
医師として私たちが大事にしているのも、実はこのTACO的なバランス感覚です。
「目が見えにくくなった」と言われたとき、
- それが白内障のような治療可能なものか
- 重篤な病気の前兆か
- 一時的な疲労か
を正確に見極めるために、その人の背景、病歴、症状の出方を冷静に観察する必要があります。先入観や大げさな言葉に流されず、淡々と“診て・聴いて・判断する”。これも“TACO”に通じる判断力なのではないかと思います。
終わりに
トランプ氏は“TACO”と聞かされて「不快な質問だ!」と怒ったそうです。それだけこの言葉が、図星だったとも言えるかもしれません。
ですが、医療の現場では、“強い言葉”や“派手な症状”の裏にある「本当の原因」を丁寧に見つけ出すことが、患者さんの安心にもつながります。
“TACO”という流行語は経済用語かもしれませんが、「表面に出た言葉だけで慌てずに、本質を見極める」という教訓は、私たちの診療にも役立つのではないでしょうか。
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