社会・経済

[No.4116] 高市内閣発足とその布陣 ― 現実路線の実務内閣に期待

高市内閣発足とその布陣 ― 現実路線の実務内閣に期待

2025年10月21日に発足した高市内閣について、ジャーナリストの須田慎一郎氏を司会に、元参議院議員の浜田哲氏、キャノングローバル戦略研究所の峯村健司氏が参加した座談会が行われた。討論では、発足の経緯から閣僚人事、政権の課題まで幅広く意見が交わされた。その要点を記す。

まず、首班指名に至るまでの過程では、高市氏が党内で地道に票をまとめ、麻生派などの支援を受けて過半数を確保したことが評価された。公明党が連立を離脱したことで政権運営に不透明感が生じたが、日本維新の会との「閣外協力」によって、法案可決の安定多数を見込める体制を整えたことは一定の成果とされた。ただし、公明党との関係調整を欠いたまま出発した点は、今後の不安材料とも指摘された。

人事面では、「派手さはないが実務能力を重視した布陣」との評価が多い。財務相の片山さつきは、租税特別措置や補助金の整理を含む歳出改革と減税の同時実行を目指す姿勢が期待される。経済財政・規制改革担当には城内実が就任し、政治主導の税制改正や成長戦略の一元化が進むとの見方もある。

安全保障と経済外交では、若手起用の小泉進次郎防衛相が注目された。サイバー防衛を含む新時代の安全保障分野に強い関心を持ち、実務を通じて評価を得ていると南氏は述べた。外相の茂木敏充と経産相の赤沢亮正は、通商交渉の経験豊富なペアであり、米国やトランプ政権との経済協議に備えた布陣と考えられる。さらに、国交相の金子恭之が海上保安庁の増強やインフラ再整備をどう推進するかが注目点とされた。

経済安全保障担当に小野田紀美を新たに登用し、外国人政策担当も兼務させたことは、経済安保と移民管理の一体的な運用を意図した明確なメッセージと受け止められている。若手や女性閣僚の登用が進んだ一方で、派閥バランスにも配慮した「挙党一致型の内閣」であるという見方が共有された。

与野党関係では、日本維新の会が掲げた三つの要求――(1)副首都構想の推進、(2)社会保障制度改革と保険料負担軽減、(3)議員定数削減――が協力の条件とされた。比例定数見直しは少数政党には厳しいが、復活当選制度などの歪みを正す効果が期待できると浜田氏は指摘。2012年の安倍・野田合意(定数削減の約束)を再浮上させた意義も強調された。

外交面では、トランプ前大統領の早期訪日観測をにらみ、同盟を軸にしつつも、防衛費増と自助努力を求められる可能性が高いとの見方が示された。国家安全保障局(NSS)の運営を通じ、安倍政権時代の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想を継承しつつ、対中関係で「対話と抑止の両立」をどう実現するかが焦点となる。

内政では、物価高騰で厳しくなる家計支援を急ぐ補正予算の早期成立が喫緊の課題であり、中期的には減税と歳出改革のパッケージを持続可能な制度として仕上げる必要がある。解散総選挙については、実績を積んでから判断するとの見方が多く、2026年を中間目標とする年次計画を進める可能性が高いとされた。

総じて、地味ながら実務に強い「現実路線の内閣」としての評価が多く、成果を上げるには戦略の一貫性と発信力が不可欠だという結論で討論は締めくくられた。


院長コメント(清澤)

医療の現場では、物価上昇や人件費の高騰が続き、患者さんと医療機関の双方に負担が重くのしかかっています。高市内閣が掲げる経済再建と社会保障改革が、国民の安心につながる実効性ある政策として実現することを大いに期待します。特に、医薬品供給の安定化や医療人材確保など、医療基盤の強化に向けた具体的な取り組みを望みます。

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