社会・経済

[No.4343] 米国のベネズエラ侵攻をどうみなすか?

ベネズエラ政変をめぐって、評論家の 青山繁晴 氏は、極めて踏み込んだ見解を示しています。氏は今回の政権交代を「偶発的な崩壊」ではなく、米国を含む外部勢力が長期にわたって準備した“緻密な計画”と捉え、その中核に「次期大統領となる女性副大統領が、実は前大統領を裏切った内通者ではないか」という構図を描きました。つまり、政変の鍵は軍事行動や制裁ではなく、体制内部からの切り崩しにあった、という見方です。

この解釈は、国際政治を「裏切り」「内通」「二重構造」といったドラマ性の高い語彙で説明する点に特徴があります。確かに、長期独裁体制が崩れる際、内部協力者が存在する例は歴史上少なくありません。その意味で、青山氏の仮説は一概に荒唐無稽とは言えないでしょう。

しかし、Bloomberg が報じた今回の記事は、こうした“裏切りの物語”とは一線を画しています。ブルームバーグが描くのは、善悪や忠誠の問題ではなく、「誰が、最も現実的に国家を動かせるのか」という、きわめて冷徹な実務の論理です。

記事の主役である デルシー・ロドリゲス 氏は、失脚した ニコラス・マドゥロ 氏を裏切った人物としてではなく、むしろ“最後まで体制を支え続けた実務家”として描かれています。国際制裁と経済崩壊の中で、石油相として国営石油会社 PDVSA を監督し、汚職や財務問題に向き合ってきた。業界関係者やロビイストが彼女を評価した理由も、思想や忠誠ではなく、「最悪の環境で国家運営を続けてきた経験」でした。

ここで浮かび上がるのは、二つの全く異なる世界観です。

青山氏の視点は、「誰が裏で糸を引いたのか」「誰が寝返ったのか」という権力闘争の物語に光を当てます。一方、ブルームバーグの記事が示すのは、「混乱を最小限に抑えるため、誰を使うのが最も都合がよいか」という管理と継続性の論理です。

実際、ドナルド・トランプ 氏が暫定指導者として支持したのは、民主化運動の象徴である マリア・コリナ・マチャド 氏ではありませんでした。これは「理想の民主化」よりも、「石油産業を止めない現実」を優先した選択だったと読み取れます。

青山氏の言う“裏切り”があったとしても、それは道徳的断罪の対象ではなく、大国の利害調整の中で利用された一要素に過ぎなかった可能性があります。

要するに、青山氏の議論が「なぜ彼女は裏切ったのか」を問うものであるなら、ブルームバーグの記事は「なぜ彼女しか選択肢がなかったのか」を説明しているのです。

ベネズエラの未来を左右するのは、裏切りの有無ではなく、制裁下で疲弊した国家を、彼女がどこまで“壊さずに動かせるか”という一点に集約されつつあります。

政治をドラマとして見る視点と、システムとして見る視点。その対比こそが、今回の政変を読み解く最大の分岐点なのかもしれません。

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