眼科検診で黄斑出血疑いと指摘されたなら
20歳代の女性が眼科の健康診断で黄斑出血の疑いがあると指摘され眼科を受診しました。視力、眼圧、倒像鏡検査には異常が見られず、歪視の訴えもありませんでした。さらに、カラー眼写真、OCTワイド写真、OCTアンギオ撮影でも異常が確認されず、正常眼底と診断しました。しかし、このようなケースでは考えておくべき網膜疾患がいくつか存在します。以下に、20歳代の女性における黄斑出血疑いの場合に考えられる網膜疾患とその鑑別点を挙げます。
考えられる網膜疾患と鑑別点
1、中心性漿液性網脈絡膜症 (CSCR: central serous chorioretinopathy)
– 症状: 視力低下、視野の中心部における暗点または歪み。
– 鑑別点: OCTで漿液性剥離が確認されることが多いが、一部の初期段階や小さな病変では見逃されることもあります。フルオレセイン蛍光眼底造影でのリークパターンが典型的。
2,網膜静脈分枝閉塞 (BRVO: branch retinal vein occlusion)
– 症状: 片眼性の視力低下、視野欠損。
– 鑑別点: 眼底写真での出血と網膜浮腫、OCTで浮腫の確認。網膜静脈の閉塞部位が特徴的。
3,黄斑円孔 (macular hole, pseudomacular hole)
– 症状: 中心視力の低下、視覚の歪み。
– 鑑別点: OCTで黄斑の構造異常が確認されることが多い。疑われる場合、OCT- 5ラインズで黄斑部の網膜断層像を再確認する。
4,特発性黄斑出血 (idiopathic macular hemorrhage)
– 症状: 突然の視力低下、中心部の暗点。
– 鑑別点: 眼底写真で黄斑部の出血が確認される。原因が特定されないことが多い。
5, 白血病 (leukemia)やその他の血液疾患
– 症状: 全身症状(疲労、易感染性、出血傾向)。
– 鑑別点: 血液検査で異常が確認されることが多い。眼底写真での出血の広がりが特徴的。
6,外傷性出血 (traumatic retinal hemorrhage)
– 症状: 外傷後の視力低下、網膜の出血。
– 鑑別点: 眼底写真での出血が外傷に一致する。
7,脈絡膜新生血管 (CNV: choroidal neovascularization)
– 症状: 中心視力の低下、視覚の歪み。
– 鑑別点: OCTアンギオグラフィーで新生血管の確認が必要ですが、早期または小さな新生血管は見逃される可能性がある。強度近視性黄斑変性や加齢黄斑変性で見られやすい。
8,眼底の生理的バリエーション
– 症状: 無症状の場合が多い。
– 鑑別点: 繰り返しの検査での安定した所見、他の臨床症状の欠如。
まとめ
詳細な問診や全身状態の確認、定期的なフォローアップが重要です。必要に応じて、血液検査や追加の眼科的検査を行うことが推奨されます。
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