◎ 最近、江戸時代を舞台にした歴史小説(長編時代小説、地の業火、勘定吟味役異聞(五)決定版、上田秀人)を楽しんでいます。主人公の水城聡四郎ら3人を尾張徳川家が木曾衆を使って襲わせるという場面がありました。「木曽衆は壬申の乱までさかのぼる歴史を持つ。大海人皇子の挙兵に応じ、騎馬を揃えて参集し、瀬田で大友皇子の軍勢を破ったことに始まり、源義仲の平家討伐の原動力ともなった。耕作地の少ない木曽の山中に住んでいることから忍や雇われ兵として出稼ぎしなければ生きていけず、代々武を受け継いできた。不幸なことに、その独特の形態から一つの勢力として徳川に組み込まれず、郷士として反農半士の扱いしか受けられなかった。歴史の変動に手を貸しながら、利を手にできなかった木曽衆にとって、士分となることは悲願であった」というのです。母の里が木曽須原宿ですが、このような見方を私は初めて目にしました。虚構としては有りでしょうが、戦国時代末期に木曽氏が膨張して松本平までを版図に収めた一時期以後では、木曽氏は今の千葉県旭市に転封され、そして間もなく改易されました。この長大な谷は尾張藩に組み込まれたので、この小説のような補助的な武装勢力としては存在しなかったと思われます。しかし、真田十勇士の猿飛佐助が知られるように、信濃の各地方勢力にもそれぞれの忍が隷属しては居たことでしょう。
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