在来種の朝顔とその魅力 ― 目の健康とつながるお話
夏から秋にかけて、日本の庭先や塀のそばでよく見かける花といえば「朝顔」です。ご近所の工務店主さんが大切に育てたプランターの朝顔も、ようやく淡い紫の花を一斉に咲かせました。昔から日本人に親しまれてきた「在来種の朝顔」には、実は文化的な背景や、人間の目にまつわる興味深いトリビアもあります。ここではその魅力をやさしくご紹介します。
① 朝顔の歴史と「在来種」
朝顔はヒルガオ科の植物で、原産は熱帯アジアや中南米とされます。日本には奈良時代から平安時代にかけて薬草として伝わったといわれています。当初は「牽牛子(けんごし)」という漢方名で下剤に利用されていました。やがて観賞用として改良が進み、江戸時代には「変化朝顔」と呼ばれる多彩な品種が流行しました。
「在来種」という言葉は、近年の園芸的に改良された派手な園芸品種とは違い、昔ながらに残されてきた姿を持つ朝顔を指します。素朴で落ち着いた色合いや花型を保ち、毎年種を採って翌年につなげることができるのも特徴です。今回咲いた薄紫の花も、そうした伝統の系譜にあると考えられます。
② 朝顔の花の不思議
朝顔の花は、その名の通り朝に咲いて昼頃にはしぼみます。これは花弁の細胞内で「水分の移動」が大きく関わっている現象です。昼になると気温が上がり、水分が抜けることで花が閉じてしまいます。毎日新しい花を咲かせ、次々にバトンタッチするように咲き続ける姿は、日本の夏の風物詩といえるでしょう。
また、花の色が紫や青から赤に変化することもあります。これは「アントシアニン」という色素がpHの変化で色を変えるためです。実はこのアントシアニンは、ブルーベリーや赤ワインに含まれ、目の健康にも良いとされている成分です。
③ 朝顔と目の健康トリビア
朝顔そのものを薬として目に使うことはありませんが、いくつか面白い「目」に関するつながりがあります。
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アントシアニンと視覚機能
朝顔の青紫の色をつくるアントシアニンは、網膜の「ロドプシン」という視覚物質の働きを助けるとされます。暗順応(暗い場所に慣れる力)をサポートし、夜間の見え方を改善する可能性があると注目されています。実際にブルーベリーやカシスのサプリメントは、この成分を利用して「目の疲れをやわらげる」と宣伝されることがあります。 -
朝顔市と視覚文化
東京・入谷の朝顔市は江戸時代から続く行事で、鮮やかな色彩の花が一面に並ぶ光景は、まさに「視覚を楽しむ文化」でした。色彩の鮮やかさは人間の網膜の「錐体細胞」による色覚の働きを引き出し、夏の季節感を脳に強く印象づけます。 -
目と季節リズム
朝顔が「朝に咲き昼にしぼむ」というリズムは、人間の目の概日リズム(体内時計)と重ねて考えることができます。太陽の光を浴びることで目の網膜から脳に「今は朝だ」と信号が送られ、体内のリズムが整います。朝顔を見ること自体が、心身を自然の時間に合わせるヒントになっているのです。
④ まとめ ― 朝顔から学ぶ目の大切さ
在来種の朝顔は、華やかな改良品種と比べると素朴ですが、その分「日本の夏の記憶」を素直に伝えてくれる存在です。朝だけに咲く短い命の中に、私たちが自然に寄り添ってきた時間の積み重ねが感じられます。
さらに、朝顔の色をつくるアントシアニンは目の健康とも関わりがあり、朝に咲いて昼にしぼむ習性は私たちの生活リズムを考えるうえでも象徴的です。美しい花を眺めることは、心を和ませるだけでなく、視覚を通じた健康維持にもつながるのです。
ご近所のプランターに咲いた紫の朝顔も、そんな自然と人間の目の結びつきを静かに語ってくれているのではないでしょうか。
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