高円寺の緑道公園沿いを歩いていると、満天星(どうだん)つつじが見事な色合いに紅葉しているのに気づきます。赤一色ではなく、橙や黄色が混じった柔らかな色調で、思わず足を止めて眺めたくなる景色です。
満天星つつじは、ツツジ科に属する日本原産の落葉低木で、学名は Enkianthus perulatus といいます。古くから庭木や生け垣として親しまれ、特に関東地方では公園や遊歩道でよく見かける植物です。春には小さな白い壺形の花を下向きに咲かせ、夏は爽やかな緑の葉を茂らせ、秋になると写真のような鮮やかな紅葉を見せてくれます。一年を通して姿を変え、季節の移ろいを分かりやすく伝えてくれる植物といえるでしょう。
「どうだん」という名前は、枝分かれの形が昔の灯台(結び灯台)に似ていることに由来するといわれています。自然の造形と人の暮らしの感覚が結びついた、日本的な命名でもあります。
さて、この満天星つつじの紅葉は、眼科的な視点から見ても興味深い話題を含んでいます。秋に葉が赤くなるのは、葉緑素が減少し、アントシアニンという赤い色素が増えるためです。このアントシアニンは抗酸化作用をもつことで知られ、ブルーベリーなど「目に良い」とされる食品にも多く含まれています。もちろん満天星つつじは食用ではありませんが、私たちの目にやさしい色を作り出している点は共通しています。
また、赤や橙といった暖色系の色は、コントラストがはっきりしており、加齢により視機能が少し低下した方でも比較的認識しやすい色です。白内障の初期や、まぶしさを感じやすい方でも、「紅葉はきれいに見える」と感じることが多いのは、このためです。自然の色彩は、私たちの視覚の変化を静かに補ってくれているのかもしれません。
さらに、季節の植物を意識して眺めること自体が、目と心のリフレッシュにつながります。スマートフォンやパソコンの画面を見続ける日常の中で、緑道の紅葉に視線を移すことは、目を遠くに向け、緊張を和らげる良い機会になります。
高円寺の緑道公園沿いの満天星つつじは、単なる街路樹ではなく、季節の変化と視覚の健康をそっと教えてくれる存在です。通りがかりに少し立ち止まり、その色合いを楽しんでみてはいかがでしょうか。目にも心にも、やさしい時間になると思います。



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