眼科医療経済等

[No.1771] オープンサイエンス時代の論文出版:大隅典子教授

第2回:最新学術情報の‘商業化‘ 東北大学の医学部付属図書館長 大隅典子教授の記事を紹介します。今回は論文出版に関わる諸問題が論じられています。インパクトファクターIFは教授選考の評価対象にもなり、若い研究者にも無視できないものです。OA ジャーナルやIFの持つ仕組みの大きな問題点を、大隅先生は述べています。

   ーーー要点ーーーーー

論文へのアクセスの格差:大規模大学では図書館資料費で購入されるジャーナル数も多い。知のインフラへのアクセスは大学によって格差が存在する。ジャーナルはパッケージ化され、電子ジャーナルは極めて重宝である。出版社は次々と新たなジャーナルを創刊し、購読料を上げていった。大学によっては、購読ジャーナル数を減らす。大手出版社により市場は寡占状態である。

研究競争の激化とインパクト・ファクター

インパクト・ファクターは1975年から使われ始めた。データベース収録の自然科学、社会科学分野の21000誌を対象に、各誌に含まれる論文数と被引用数から算出されるIFは本来その雑誌の平均的な論文の引用回数を示すものであり、個々の論文の価値を示すものではない。数字は分かり易いので、医学生命科学業界の研究者はIFに敏感である。

学術論文を2つに分けると、歴史的に古い「学会誌」の系統と「商業誌」がある。現在多くの学会誌も大手出版社の傘下にある。IFが普及する以前より、雑誌の「格」は存在した。ちなみに臨床系の雑誌のIFは更に高騰していて、ネットで販売されるワインの市場を思い出させる。研究者人口が増え、分野が細分化されて深化し、自分のよく知る分野以外の研究評価が難しくなると、分かり易いものさしの1つとしてIF値が重宝されるようになった。論文の中身でなく、掲載された雑誌のIF値が独り歩きしている。研究室主催者にとっては、高IF値のジャーナルに論文を出すことが、大型研究費の獲得に直結し、若い研究者には次のポストを獲得できるかどうかにかかわる。このような状況が研究不正を生む土壌にもなり得る。

APCの負担増:オープンアクセス(OA)論文は他の研究者の目に触れることも多く、被引用数が多くなる。研究者としてはなるべくならOA論文を出版したい。だがOA出版には高額なAPC(Article publishing charge)と呼ばれる掲載料が必要となる。APCとIFの間には「正の相関性」がある。APCも徐々に値上がりしており、研究者にとっての負担は大きい。現在、OA誌のAPCのボリュームゾーンは3000ドルくらいのところにあり、もう少し高IFの雑誌では6000ドルあたり。APCは、通常研究費から支払われる。文部科学省の一般研究Cと呼ばれる枠では3から5年間の研究期間に対して、500万円の支援がなされる。一報で40-50万円のAPCを支払う事はかなり厳しい。つまり、大型研究費を獲得している研究者で無ければ、高IFの雑誌に投稿できないという事になる。この状況は由々しき問題である。現状を打開する方策については次回の論点とする。

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