ビジュアルスノウ

[No.4227] ビジュアルスノウ症候群をめぐる世界の専門家会議の報告

ビジュアルスノウ症候群をめぐる世界の専門家会議

――Visual Snow Initiative(VSI)ラウンドテーブルの最新報告

最近、ビジュアルスノウ症候群(Visual Snow Syndrome:VSS)に取り組む国際的な団体「Visual Snow Initiative(VSI)」が、最新のラウンドテーブルディスカッションのハイライト動画を公開しました。VSI は、世界中の研究者や医師、科学者、当事者の支援者などからなるグローバルチームを組織しており、疾患の理解を深め、適切な診断と治療につながる情報の発信、そして将来的な治癒法の確立を目指しています。

このラウンドテーブルは、VSI 創設者で医療アドボケイトのシエラ・ドム氏が司会を務め、VSS 研究の初期から関わってきた国際的な専門家が多数参加しました。主なメンバーには、世界的な頭痛・視覚研究者である Dr. Christoph Schankin や Dr. Peter Goadsby、脳科学の先端研究で知られる Dr. Edward Boyden、VSS研究に継続的に取り組む Dr. Francesca Puledda らが名を連ねています。彼らは互いの最新研究を共有し、今後の治療の可能性について議論を深めました。

● VSS の「脳の過活動」という視点

今回の会議で中心となった話題の一つは、VSS にみられる「脳の視覚領域の過活動」です。見えていない刺激に対しても視覚野が通常より常に高ぶった状態にあるのではないか、という仮説は、VSS の“ざらざらした視界”や残像、光視症などの特徴的な症状とつながる可能性があります。

● 食事・ビタミン・サプリメント

患者さんからも質問の多い「食事やビタミンの影響」についても議論がなされました。現時点では確実に効果が示された栄養素は限られていますが、いくつかの研究が進行中であり、過剰な期待を抱かず、科学的根拠が整うまで慎重な姿勢が必要と強調されました。

● バイオマーカーと治療法の探索

もう一つ重要な話題は、**バイオマーカー(客観的に測れる生物学的指標)**を探す取り組みと新しい治療可能性についてです。薬物治療の候補や、非侵襲的なアプローチが検討されており、薬剤ターゲットの研究も進んでいます。また、VSS と類似症状を持つ HPPD(薬物誘発性知覚障害)や片頭痛の閃輝暗点との関連も議論され、疾患間の共通点と違いが今後の治療開発に役立つ可能性が示されました。

● 呼称・分類・遺伝子研究

「Visual Snow Syndrome」という名称が疾患の全体像を適切に表しているかという点についても意見が交わされました。さらに遺伝子や分子レベルの研究が進み、特定の遺伝的特徴がVSSの一部の人に関わるのではないか、という新たな視点も共有されています。

● 新しい治療アプローチ:脳刺激、VR/AR、MBCT

近年注目される**ニューロモジュレーション(脳機能の調整)**に関する研究報告もありました。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使ってVSSの見え方を再現するツールも開発されており、医師や家族が症状を理解する手がかりになります。また、認知行動療法の一種である MBCT(マインドフルネス認知療法) が一部の患者さんで症状の感じ方を和らげる可能性が示され、今後の臨床応用が期待されています。

● 子どものVSSと新サイト「VSI4Kids」

会議では、子どものVSSにも焦点が当てられました。症状を言葉にしにくい若年患者への支援体制の不足が課題ですが、今回、VSI が「VSI4Kids」という新しい情報サイトを立ち上げ、家族や教育者の理解を助ける資料やツールを提供することが紹介されました。

● 患者中心の研究へ

参加者全員が強調したのは、「患者さんの経験を中心に研究を進めること」の重要性です。世界中の研究者が連携することで、VSSへの理解は着実に深まりつつあります。薬物治療や非侵襲的手法を含むさまざまな可能性を探りながら、将来の治療法の確立に向けて歩みが進んでいます。

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