ビジュアルスノウ症候群の診断 ― 片頭痛、持続性視覚症状、眼疾患との見分け方の勘所 ―
「視界に常に細かな砂嵐のようなものが見える」「暗いところや空を見ると、ちらちらして落ち着かない」
こうした訴えで受診される方の中に、ビジュアルスノウ症候群(Visual Snow Syndrome:VSS)と考えられるケースがあります。
VSSは比較的新しく整理された病態で、検査をしても目そのものに異常が見つからないことが多く、診断に迷いやすいのが特徴です。今回は、片頭痛や他の視覚症状、眼疾患との見分け方のポイントを中心に整理します。
1.VSSとは何か
VSSの中核症状は、「視野全体に、常に、細かな点状のノイズ(砂嵐)が見える」ことです。
重要なのは、
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両眼で見える
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目を閉じても感じる
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数か月~数年以上、持続する
という点です。
これに加えて、
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光がまぶしい(羞明)
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残像が残る
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暗所で見えにくい
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動くものがぶれて見える
などを伴うことがあります。
2.片頭痛との見分け方
VSSは片頭痛、とくに前兆を伴う片頭痛と混同されやすい病態です。
見分ける勘所は「時間」です。
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片頭痛の前兆(閃輝暗点など)は、数分~1時間以内に消失します。
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一方VSSは、24時間、毎日、持続します。
「昔から片頭痛はあるが、その発作がない日でも砂嵐がずっと見える」という場合、VSSを疑う根拠になります。
3.持続性視覚症状(PPDなど)との違い
片頭痛後に視覚症状が長引く「持続性視覚症状(いわゆるpersistent aura)」も鑑別が必要です。
こちらは、
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視野の一部に偏る
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形が一定(ギザギザ、暗点など)
ことが多いのに対し、VSSは視野全体に均一なノイズが広がる点が特徴です。
4.眼疾患との見分け方
網膜疾患、視神経疾患、白内障などでも「見えにくさ」「ちらつき」を訴えることがあります。
重要なポイントは、
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視力検査
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眼底検査
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OCT
などの眼科的検査がほぼ正常であることです。
また、眼疾患では
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片眼性
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視野の一部のみ
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徐々に進行する
といった所見を伴うことが多く、両眼・全視野・非進行性というVSSの特徴と異なります。
5.なぜ診断が難しいのか
VSSは現在、脳の視覚処理の過敏・ネットワーク異常が関与すると考えられています。
そのため、眼科検査やMRIで「異常なし」と言われやすく、患者さんは
「気のせい」「異常がないのに見えにくい」
と強い不安を抱えがちです。
診断の勘所は、
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症状の内容を丁寧に聞く
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時間経過を確認する
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除外診断を行う
という、問診の質にあります。
まとめ
ビジュアルスノウ症候群(VSS)は、
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片頭痛とは「一過性か持続性か」で見分ける
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眼疾患とは「検査所見と左右差」で見分ける
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最も重要なのは「症状の語り」を丁寧に聴くこと
が診断の要点です。
出典
Aeschlimann SA, et al.
Visual snow syndrome: recent advances in understanding, diagnosis, and management.
Current Opinion in Neurology, 2024.
清澤のコメント
VSSは「原因不明の不思議な症状」ではなく、少しずつ医学的理解が進んでいる病態です。
正しく見分け、病名を共有すること自体が、患者さんの安心につながります。
「異常なし」で終わらせず、困りごとに寄り添う診療が今後ますます重要になると感じています。g



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