眼科医療経済等

[No.2755] Society 5.0時代の医療とスマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の社会実装:記事紹介

「Society 5.0時代の医療とスマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の社会実装」という順天堂大猪俣武範氏による学術記事が東京都眼科医会報268号(2024年夏p2-7)に掲載されています。文中にはDX、IoMT、ICTなどの見慣れない単語も出てきますが、これからの医療の方向を予言するものとして有用と考えました。ドライアイ診断は其の一端にすぎませんが、我々臨床眼科医も日々このような機材を使いこなせるような技術の習得に励む必要がありそうです。この記事の内容を要約して採録させていただきます。

Society 5.0時代の医療

Society 5.0は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する未来社会です。特に医療分野では、Internet of Medical ThingsIoMT)やセンサーを通じて収集されたリアルタイムデータをAIで解析し、個別化・予防医療を実現するPA Medicineが期待されています。

IoMTは、スマートフォンによる遠隔診療やウェアラブルデバイスのリアルタイムモニタリングなど、様々な形で活用されています。2023年までに20種類以上のAIを活用したプログラム医療機器が承認され、特にロボットアームやVRヘッドセットを用いた遠隔手術システムが開発されています。

眼科におけるスマートフォンアプリケーションの利活用

IoMTやICT(Information and Communication Technology(情報通信技術)、情報技術(IT)と通信技術(CT)の融合)の進歩により、ヘルスケアにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。スマートフォンは、健康データの受動的な収集やユーザーの能動的な入力を組み合わせて、健康状態の評価や疾患の早期発見に寄与します。

眼科分野でも、スマートフォンアプリを用いた診療が進展しており、視力検査や糖尿病網膜症のスクリーニング、鑑別診断支援を目的としたアプリが多数リリースされています。我々が2022年に実施したレビューでは、48個の眼科関連アプリが特定され、その中には診断・手術支援、患者の治療アドヒアランス管理を目的としたものも含まれています。

スマホアプリ型プログラム医療機器とは

デジタルヘルスは、病気の管理や健康増進を目的にICTを活用する医療を指し、プログラム医療機器(SaMD)が注目されています。SaMDには、エビデンスに基づいた診断・治療・予防を目的とする医療機器が含まれ、適切な承認を受ける必要があります。

ドライアイのアンメットメディカルニーズ

ドライアイは日本で2,200万人、世界で10億人以上が罹患する最も多い眼疾患です。しかし、その治療は未だに点眼による対症療法が主体であり、完治する方法は存在しません。そのため、ドライアイの発症や重症化を防ぐ予防医療や適切な治療介入が重要です。

スマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の研究開発

我々は、2016年よりドライアイ研究用スマホアプリ「ドライアイリズム®」を開発し、スマホアプリを用いた大規模なデジタルコホート研究を進めてきました。スマホアプリによる非接触・非侵襲的なドライアイ診断方法を開発し、現在、医療機器承認を目指して臨床治験を実施中です。

スマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器が実現すれば、スマホアプリを通じたドライアイ診断が可能となり、細隙灯顕微鏡のない場所でも診断が可能になります。これにより、医療機関を受診できない患者に対する遠隔診断やフォローアップが期待されます。

結び

Society 5.0時代の医療では、デジタルヘルスの拡大が急速に進む中、ドライアイ診療のDXがアンメットメディカルニーズを解消し、未診断のドライアイ患者の早期発見や継続的なモニタリングによる重症化予防が可能となります。これにより、ドライアイ診療の質向上が期待されます。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。