眼科医療経済等

[No.3094] 症例記載で、「初診日をx日とし、以後をx+何日とする」という形式について

学会で神経眼科の大先輩の先生方とお話ししたときに、「医学の症例報告で初診日をx日とし、以後をxプラス何日と記載する書き方」は英文にはなく、これが気になるという話を伺いました。私も、後輩がこの書き方で発表するのを見て、反対ではありませんがおやっと思ったことがありました。昔は、「患者は〇澤〇弘」などと患者氏名を記載した症例報告の記録さえもありました。プライバシー保護の観点で患者の特定を避けるという意味もあったのかと思い、調べてみました。
A:医学の症例報告で「初診日を x 日とし、以後を x プラス何日と記載する」書き方の起源は、明確に特定されたものはありません。しかし、次のような背景や理由からこの形式が使用されるようになったと考えられます。

1. タイムラインの明確化

症例報告において、経過を追跡することが重要です。初診日を基準とすることで、治療の進行や患者の状態変化を時系列で整理しやすくなります。

  • 初診日を「x 日」と設定することで、患者の経過を統一された基準から記録できる。
  • この形式は、特に長期的な経過観察が必要な症例で有用です。

2. 研究・統計的な影響

医学研究では、日付そのものよりも、経過日数や治療開始後の日数などの「基準からの相対的な期間」が重要視されます。この書き方は、以下の理由で採用されやすい形式といえます。

  • データ解析の利便性:相対的な経過日数を統一した形で記録することで、統計分析が容易になります。
  • 比較の容易さ:複数の症例や患者間で同じ基準日を設定することで、経過の比較が直感的になります。

3. ドイツ医学の影響

日本の近代医学は明治時代にドイツ医学から強く影響を受けました。ドイツ語圏では、経過記録において「Tag X」(X日目)や「X+Y Tage」(X日目からY日後)といった形式が用いられることがあります。この習慣が日本の医学界に輸入され、現在の「初診日をx日とし、以後をx+何日とする」という形式に影響を与えた可能性があります。


4. 臨床試験の基準日設定

臨床試験や治験では、治療開始日や初診日を基準として経過を記録することが標準的です。これにより、症例報告でも類似の形式が自然に普及した可能性があります。


5. 日本独自の簡便化

欧米の医学記録を参考にしつつも、日本の医師や研究者が独自にアレンジして現在の表記法が定着した可能性も考えられます。この形式は、日常臨床や学術論文で広く使用され、標準化された可能性があります。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。