眼科医療経済等

[No.3583] 米国における「サイトニュートラル政策の新たなビジョン」:論文紹介

「サイトニュートラル政策の新たなビジョン」:

 JAMA Ophthalmology2025522日号)

【白内障手術と「サイトニュートラル」政策の最新動向】

清澤のコメント:日本でも以前は白内障手術は入院が普通で、麻酔にも球後麻酔が用いられましたが、現在ではほぼ外来で点眼麻酔下で行う様になっています。また、白内障手術を病院ではなく眼科開業医で受ける患者さんも増えています。診療施設にとっては白内障手術費用の削減は収支を考えると大変でしょうし、米国で白内障手術の麻酔を担当している麻酔医にも更に大変な改革でしょう。しかし、誰もが高い医療費を負担できるわけでもなく、国としてのオバマ医療も否定された米国では今後も医療費の削減は更に進むと思われます。

  1. サイトニュートラル政策とは?
    「サイトニュートラル(Site-neutral)」とは、「同じ医療行為に対しては、どこで施術しても(病院かクリニックかに関係なく)同じ医療費を支払うべき」という考え方です。
    現在の制度では、病院で行うと高額な医療費が支払われ、外来手術センター(ASC)や診療所で同じことをしても低く評価されがちです。これを是正しようというのが「サイトニュートラル支払い制度」です。
  2. 白内障手術の現状と課題
    米国では白内障手術は年間370万件以上実施され、最も多い手術の一つです。現在は多くが外来手術センター(ASC)で行われていますが、費用がかさむ麻酔(MAC)や病院施設での実施が一般的です。しかし、英国などでは麻酔なしで行うケースも多く、結果も同等であると報告されています。
  3. 医療費削減のための提案
    政策提言者たちは、以下のような改革を推奨しています:
  • 白内障手術を診療所ベースで実施できるように促進
  • 麻酔科医を使わず、局所麻酔や内服鎮静での手術を推進
  • サイトニュートラル支払い制度により、施術場所にかかわらず公正な支払いを実現
  • ASCや病院の麻酔室リソースをより必要な処置に回せるようにする
  1. 眼科医に期待される役割
    眼科医はすでに手術場所の移行(病院→ASC)を主導してきました。今後は、さらにコストを抑えて患者にもやさしい、診療所内での白内障手術の導入が求められています。
  2. 残された課題と提案
  • 診療所ベースの手術を安全に行うためには、無菌環境の確保と州レベルでの監視体制が必要です
  • 高リスク患者には、引き続きASCや病院での麻酔下手術が必要です
  • 医師が裁量をもって個別に適切な施術場所と麻酔方法を選べる制度設計が重要です

このように、白内障手術をより簡便かつ経済的に行える体制づくりが、米国の医療政策の大きな課題となっていることがわかります。日本でも今後、診療所での眼科手術導入が進む中で、類似の議論が出てくるかもしれません。

必要であれば、図表や用語解説(例:MACASCなど)を付け加えることも可能です。ご希望があればお知らせください。

 

【用語解説】

  • MAC(監視下麻酔ケア:Monitored Anesthesia Care
    白内障手術の際に、鎮静剤を使いながら、麻酔科医や麻酔看護師が患者の状態を手術中ずっと監視する方法です。通常は静脈からの軽い鎮静で、眠っているような状態になります。米国では白内障手術の9割で使われていますが、コストが高い点が課題とされています。
  • ASC(外来手術センター:Ambulatory Surgery Center
    入院を必要としない日帰り手術を専門に行う施設です。病院よりも設備は簡素ですが、安全基準は満たしており、コストが安く効率的な点から、米国では白内障手術の約75%がこのASCで行われています。
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