眼科医療経済等

[No.3831] 医療機関の経営危機が加速 ー 物価高・マイナ対応で倒産増加、縮小が迫る診療科も

医療機関の経営危機が加速 ー 物価高・マイナ対応で倒産増加、縮小が迫る診療科も

近年、日本全国で病院やクリニックの倒産が増加しています。東京商工リサーチによれば、2025年上半期の倒産件数は前年同期比16.6%増の21件。特に病床20床以上の病院が急増し、前年の2.6倍となりました。背景には、低すぎる診療報酬と物価高騰が重くのしかかっています。

収入は据え置き、コストは増加

日本の診療報酬は全国一律で、2024年の改定は+0.88%にとどまりました。一方で医療機器・薬剤の多くは輸入品で円安の影響を受けやすく、人件費や光熱費、入院食材費も高騰しています。産婦人科では帝王切開手術の診療報酬が約20万円と低く、採算が取れないとの声もあります。

マイナ保険証・医療DXの重荷

コロナ禍で患者受け入れ制限による赤字を経験した病院も、利用率回復後には電子カルテ更新やマイナ保険証対応など政府主導のDX投資負担が加わり、黒字化できません。更新費用やシステム維持費は継続的に発生し、多くの施設が借入金返済に苦しんでいます。

医療現場の節約と人材流出

経費削減は極限まで進み、裏紙の再利用や古いPCの継続使用、蛍光灯や空調の制限などが日常化。賃金改善が進まず、看護師離職率は過去最高の約12%に達しました。突然の病院閉鎖や救急搬送遅延で、患者の命に直結する事例も報告されています。

診療制限と地域格差

人員不足や設備更新困難により、手術待ち期間の長期化や救急医療縮小が顕在化。例として、乳がん患者が手術まで2か月待たされるケースや、産科が減少して妊婦が病院近くに宿泊する事態も起きています。

将来切り捨てられる診療科

経営的に不採算な小児科や産科、救急は、今後縮小・廃止される恐れがあります。小児診療は診療単価が低く、出生数減少で患者数も減っています。救急も赤字覚悟の部門であり、搬送先が見つからない事態が現実化しつつあります。

院長としての所感

医療現場は診療報酬と物価高の板挟みで、ぎりぎりの経営を続けています。特に不採算部門の維持は、地域医療の生命線でありながら放置されれば真っ先に切り捨てられかねません。社会保障費削減の流れが続けば、「あなたの街から病院が消える」日は現実になります。今こそ、国や自治体が緊急的な経営支援と報酬体系見直しを行い、地域医療を守る必要があります。

出典:「女性自身」2025819日・826日合併号「物価高、マイナ対応で医療機関が倒産ラッシュ将来真っ先に『切り捨てられる診療科』とは」

 

 

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