本日届いた日医ニュース(1535号)にかかりつけ医機能報告制度にかかる研修」についてという今村受任記事のインタビュー記事が出ていました。現状ではその研修を修了してもメリットはないようですが、そこでこの制度と眼科開業医の関連について調べてみました。
眼科医院とかかりつけ医機能について
近年、厚生労働省や日本医師会が推進している「かかりつけ医機能」という言葉を耳にする機会が増えました。本来は内科や小児科など、患者さんが体の不調をまず相談する「総合窓口」の役割を持つ診療科に重きが置かれてきましたが、実際には眼科を含め、地域で長く患者さんを診ている開業医全般に関係する制度です。
かかりつけ医機能とは?
かかりつけ医機能の基本は「地域の中で患者さんにとって身近な相談先となり、必要に応じて専門的な医療機関とつなぐ」という考え方です。ここには次のような役割が含まれます。
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健康や体調について日常的に相談を受ける
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患者さんの診療情報を把握・管理する
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必要に応じて専門医療機関や他の診療科に紹介する
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在宅医療や介護など地域の資源と連携する
眼科でも、糖尿病網膜症や緑内障、加齢黄斑変性といった慢性疾患の患者さんを長期間フォローします。こうした患者さんの生活背景や合併症を把握しながら、他科への紹介を行うことは、まさにかかりつけ医機能の一部にあたります。
制度の骨子 ― 誰に何を報告するのか?
現在の制度では「外来機能報告」という仕組みが設けられています。これは、各診療所や病院が「自分たちがどのような医療機能を担っているか」を医療機関自らが報告し、それを都道府県が取りまとめる という制度です。
具体的には、診療所も含めた医療機関が年に一度、次のような項目を厚労省に報告することになっています。
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かかりつけ医機能を持つかどうか(日常的な健康相談、継続的管理、地域連携の実績など)
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紹介・逆紹介の実績(患者さんを専門病院に紹介した件数、病院から紹介を受けた件数)
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在宅医療や地域包括ケアとの関わり
この報告は各医療機関から都道府県を通じて厚労省へ提出され、地域の医療提供体制の見直しや、今後の診療報酬改定に反映されます。つまり「誰に対して」という点では、都道府県と厚労省 が主な相手であり、最終的には国の医療制度設計に役立てられるという仕組みです。
眼科医院にとっての意義
一見すると「眼科には関係がないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、眼科は次のような場面でかかりつけ医機能を発揮しています。
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糖尿病網膜症の管理を通じて、血糖コントロールの重要性を患者さんに伝え、内科と連携する
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緑内障や高齢者の白内障患者を継続的にフォローし、転倒予防や生活指導につなげる
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黄斑変性症などで定期注射を行いながら、生活の質を保つ支援を行う
これらは「目の専門家」としての診療であると同時に、患者さんの健康全般を守る窓口でもあります。
医師会の講習を受ける意味
医師会では「かかりつけ医研修」と呼ばれる講習を実施しています。これは、かかりつけ医機能を担う診療所が患者さんや地域から信頼されるための基盤作りとして推奨されているものです。現時点で眼科に必須ではない場合もありますが、
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将来の診療報酬改定で受講が条件化される可能性がある
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患者さんや地域包括ケアの関係者からの信頼を得やすくなる
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医療DX推進体制整備加算など、関連加算の届出に有利になる
といった利点があります。
まとめ
かかりつけ医機能は、眼科に直接的な制度上の義務が課されているわけではありません。しかし、慢性眼疾患を抱える患者さんを日常的に診ている眼科こそ、地域医療の中で重要な役割を果たしています。
制度としては「誰に何を報告するのか」といえば、医療機関が都道府県を通じて厚労省へ、自らの診療機能(かかりつけ医機能の有無、紹介体制など)を報告する のが骨子です。
眼科医院にとっても、今後の制度変更を見据えて医師会の講習を受け、地域における自らの役割を再確認しておくことは、大いに意義があるといえるでしょう。
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