眼科医療経済等

[No.2504] 画像生成AIでの診断トレーニングで診断精度が改善:記事紹介

画像生成AIでの眼底疾患診断トレーニングで診断精度が大幅に改善:記事紹介

清澤のコメント:此の訓練実験の対象者は視能訓練士を目指す学生だが、1時間で眼底写真判定の成績を40%から70%に向上させたというのは素晴らしい。自分でも確認の意味でこのコースを試して自己評価をしてみたいとも思う。(サムネイルは合成AI画像ではありません。)(https://bjo.bmj.com/content/early/2024/03/14/bjo-2023-324923?rss=1

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広島大学プレスリリースの要旨:

  • AI診断トレーニングの進展 広島大学の研究グループが開発したAIを活用した網膜疾患の画像診断トレーニング方法は、医療系学生の診断能力を大幅に向上させた。
  • 合成画像の利用 Stable Diffusion 1.0を用いて生成された合成画像は、プライバシー保護に優れ、医療教育に適している。
  • 学習効果の確認 学習者は平均53分で診断精度が有意に向上し、最新AIモデルと同等以上の診断性能を獲得しました。
  • 今後の研究 AI合成医療画像トレーニングの科学的効果をさらに精緻に分析する国際共同研究を準備中。

これらの成果は、AIが医療教育を強化し、臨床教育や医療レベルの向上に役立つ可能性を示していまた、AI合成画像を用いたトレーニングは、医療画像読影のラーニングカーブを短縮し、非専門家にも恩恵をもたらすことが期待される。

  ―――プレスリリース本文の抄出―――

【研究成果】画像生成AIで診断精度が大幅に改善、眼底疾患診断トレーニングの新手法

論文タイトルUsing AI to Improve Human Performance: Efficient Retinal Disease Detection Training with Synthetic Images

概要:広島大学大学院医系科学研究科・田淵仁志寄附講座教授らの研究グループは、AIを活用した網膜疾患の画像診断トレーニング方法を開発した。今回、画像生成系AIモデルであるStable Diffusion 1.0(Stability AI)を活用して生成した600枚の合成網膜画像を用いたe-learningコースを161人の視能訓練士過程全4学年を対象に実施した結果、平均53分で診断精度が全学年で大幅に向上し、最新のAIモデルと同等以上の診断性能を獲得した。さらに学生の診断能力は未学習撮影画像でAIモデルよりも大幅に高く保たれ、汎化性能はAIより優れていることが示唆された。
本研究成果は2024314日(木)にBritish Journal of Ophthalmologyオンライン版に掲載された。

背景

 AI診断は大きな可能性を秘めているものの、安全の観点から専門医診断の併用が必要だ。AIによる見落としや、正常のものを異常とする偽陽性率の高さは医療提供サイドの責任上どうしても無視できないからだ。一方でAIによる医療の効率化については医療提供サイドも期待しているところで、AI診断の欠点を補完する役割の人材養成のニーズが存在している。これまでの人工知能技術でも画像合成は可能だったが、その生成には非常に時間がかかり、大量の画像を利用した今教育手法は現実的ではなかった。最近になって画像生成が非常に効率化された最新の画像生成系AIが登場し、懸案であった画像読影者養成の効率化手法の効果検証が可能になった。

研究成果の内容

 AI合成画像は5つの網膜疾患(網膜剥離,緑内障,加齢黄斑変性,血管閉塞症,糖尿病網膜症)及び正常眼底の計6状態各100枚で構成し、Web上の学習コースを対象に実施した。性能評価は実際の患者画像を用いて同上6状態各20枚計120枚の画像で2種類の画角(学習された220度画像(眼底の8割を撮影範囲とする超広角画像)および未学習の50度画像(一般的な健康診断で用いられる眼底中心部を精査する標準画角画像)で2回実施した。学習者は平均53分でコースを完了し、診断精度が有意に向上した。超広角画像の平均診断正答率は学習前43.6%から学習後74.1%に、標準画角画像では学習前42.7%から学習後68.7%に向上した。超広角画像で学習された最新AIモデル(イギリス エジンバラ大学)の正答率は73.3%、標準画角画像では40%であり、学習者の診断性能は最新AIモデルに匹敵する上に、応用能力(汎化性能)で大きく上回ることが示された。本研究はAIが人間のスキルを代替するのではなく、強化してくれる可能性を示した。

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