眼科医療とAIの新しい章― JAMA Ophthalmology「Eye on AI」が示す未来 ―
近年、「AI(人工知能)」という言葉を耳にする機会が急激に増えました。医療の世界でもその存在感は年々高まり、とくに眼科は、AIがいち早く実用化されてきた分野の一つです。こうした流れを受けて、2025年、JAMA Ophthalmology は新たに「Eye on AI」という特集テーマを立ち上げました。本稿では、その編集論文の内容を、できるだけわかりやすくご紹介します。
この編集論文では、AI、とくに「深層学習(ディープラーニング)」が、画像解析や文章理解の分野で飛躍的な進歩を遂げ、眼科医療、さらには医学全体を大きく変える可能性を持っていることが強調されています。専門用語が多く難しく感じられるかもしれませんが、これはかつて統計学やエビデンスに基づく医療、遺伝子検査が導入された際に、多くの医師が戸惑った状況とよく似ている、と筆者らは述べています。
眼科は、実は医療AIの「先進分野」です。2016年、眼底写真から糖尿病網膜症を判定するAI研究が発表され、世界的に大きな注目を集めました。この研究は現在までに何千回も引用され、医療AIの歴史に残る成果となっています。当時から「AIは有望だが、医師や患者が“機械に診断を委ねる”という考え方の転換が必要だ」という慎重な意見も示されていました。この課題は、10年近く経った今もなお、重要な論点として残っています。
さらに眼科は、**人を介さずAIが診断を下す「自律型AI」**が、世界で初めて正式に承認された分野でもあります。糖尿病による目の病気を調べる検査で、AIが診断を行い、その検査が医療保険の対象となったことは、医療史上の大きな出来事でした。現在、米国では眼科用AIが、実際に使われている医療AI製品の中でも上位を占めていると報告されています。
こうした急速な進歩を背景に、「Eye on AI」では、年に数回、専門家による解説記事(Viewpoint)を掲載する予定です。その目的は二つあります。第一に、次々と登場するAIの新しい概念や技術を、臨床に関わる医師が理解できる形で整理し、伝えること。第二に、AIをどのように日常診療や医療経営に取り入れていくべきかを、現実的な視点から考えることです。
今後のテーマとしては、画像と言葉を同時に理解するAI、他分野の医療AIの眼科への応用、世界各地の医療現場での課題、さらにはAIが診療だけでなく医療ビジネスに与える影響まで、幅広い話題が取り上げられる予定です。
編集部は、AIを「魔法の道具」としてではなく、正しく理解し、評価し、使いこなすことが重要だと強調しています。この新しいシリーズが、視覚障害や失明を減らすための議論や協力のきっかけとなることが期待されています。眼科医療にとって、AIはまさに新しい章の始まりにあると言えるでしょう。
出典
Liu TYA, Bressler NM.
JAMA Ophthalmology—Eye on AI.
JAMA Ophthalmology. Published online January 2, 2026.
doi:10.1001/jamaophthalmol.2025.5454
清澤のコメント
AIは「医師の代わり」ではなく、「医師の判断を支える強力な道具」です。眼科はその最前線にありますが、だからこそ仕組みと限界を理解し、患者さんにとって本当に役立つ形で活用していく姿勢が重要だと感じます。



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