眼科医療経済等

[No.4510] 「リアルフードを食べよう」―アメリカ新食事ガイドラインをどう読むか

「リアルフードを食べよう」―アメリカ新食事ガイドラインをどう読むか

今年、アメリカで新しい食事ガイドラインが発表されました。スーパーボウルのCMで、元ボクサーのマイク・タイソン氏がリンゴをかじる映像とともに「リアルフードを食べよう」と呼びかけたのをご覧になった方もいるかもしれません。加工食品ではなく、できるだけ“本物の食品”を食べようというメッセージです。

これまでアメリカの食事指針は「食品ピラミッド」から「マイプレート(皿)」へと変化してきましたが、今回は“逆さまのピラミッド”が採用されました。上部には「タンパク質・乳製品・健康的な脂肪」、その隣に「野菜・果物」、そして最下部に「全粒穀物」が配置されています。見た目もメッセージも、従来とは少し印象が違います。

ただし、栄養学の専門家の多くは「内容そのものは過去の推奨と大きく変わらない」と指摘しています。野菜や果物を多く取り、添加糖・飽和脂肪・ナトリウムを控えるという基本は共通しています。特に今回評価されているのは、10歳未満の子どもには添加糖を控えるよう明確に勧めた点です。砂糖には栄養的な利点がほとんどなく、子どもの肥満や生活習慣病のリスクにつながるため、この方針は多くの専門家から支持されています。

一方で議論もあります。ガイドラインは飽和脂肪を総カロリーの10%未満に抑えるとしながら、動物性タンパク質や全脂肪乳製品、バターや牛脂を例示しています。これでは実際には飽和脂肪が上限を超えてしまう可能性が高い、という指摘です。また、必須脂肪酸を含む油としてオリーブオイルを挙げながら、リノール酸を多く含む種子油への言及が乏しいことも議論を呼んでいます。

さらに、体重1kgあたり1.2〜1.6gという比較的高めのタンパク質摂取量が示された点についても、「十分な科学的根拠があるのか」という疑問が出ています。通常の食生活でタンパク質が不足している人は多くないため、過度な強調は不要ではないかという見方です。

精製穀物に対する厳しい姿勢にも懸念があります。アメリカでは小麦粉などに葉酸を添加する政策により、神経管閉鎖障害が大きく減少しました。精製穀物を一律に避けることが、こうした公衆衛生上の成果を損なわないかという指摘です。

また、ガイドライン作成過程の透明性や、酪農・牛肉産業との関係性についても議論が続いています。栄養科学への信頼を守るためには、プロセスの公開と説明が重要だという声が上がっています。

では私たちはどう受け止めればよいのでしょうか。形がピラミッドであれ皿であれ、結局のところ大切なのは次の点に集約されます。①野菜と果物をしっかり食べる、②高度に加工された食品や砂糖を控える、③脂肪は量と質を考える、④極端な流行に振り回されない、ということです。

眼科医の立場から見ると、食生活は目の健康とも深く関係します。緑黄色野菜に含まれるルテインやゼアキサンチンは加齢黄斑変性のリスク低減に関与し、過剰な糖分摂取は糖尿病網膜症の遠因になります。バランスの取れた“リアルフード中心”の食事は、目を含めた全身の健康を守る基本です。


出典

Abbasi J. Nutrition Experts React to New Dietary Guidelines for Americans. JAMA Medical News. Published online February 20, 2026. doi:10.1001/jama.2026.0377

眼科医 清澤のコメント

流行や政治的メッセージに目を奪われがちですが、栄養の基本原則は大きくは変わりません。患者さんには「特定の食品を極端に恐れたり崇拝したりせず、野菜中心で加工食品を減らす」という現実的な方針をお勧めしています。目の病気の予防も、日々の食卓から始まると考えています。

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