眼科医療経済等

[No.4516] 外来「医師過多区域」とは何か――自由開業制はどうなる?

外来「医師過多区域」とは何か――自由開業制はどうなる?

2026年2月15日号の『東京保険医新聞』に「“外来医師過多” 都内は17区が候補」という記事が掲載されました。都内では、区中央部・区西部・区西南部(目黒区など)・区南部・区西北部が候補に入り、江東区などは対象外とされています。

この制度は、2026年4月から始まる新しい“外来の偏在対策”の一つです。簡単に言えば、「外来診療所が集まりすぎている地域では、新しく開業する医師に対し、地域で不足している医療機能への協力を求める」という仕組みです。


1)「医師過多区域(外来医師過多区域)」とは何か

対象は入院施設を持たない無床診療所、つまり外来中心の医療機関です。国は「外来医師偏在指標」などのデータを用いて、外来医療が相対的に過密な地域を抽出し、最終的に都道府県が区域を指定します。

東京では二次医療圏単位で、目黒区を含む区西南部などが候補に挙がっています。一方、江東区や墨田区は現時点では候補外とされています。


2)何が制限されるのか

まず強調したいのは、「開業禁止」ではないということです。ただし、過多区域で新規に無床診療所を開設する場合、いくつかの手続きや要請が加わります。

  • 開業前に、提供予定の医療機能を事前に届け出る

  • 地域の協議の場に参加し、役割分担について説明・協議する

  • 地域で不足している医療機能(在宅医療、夜間休日対応など)への参画を求められる

  • 要請に応じない場合、勧告や公表の対象となる可能性がある

  • 保険医療機関の指定期間が短縮されるなどの措置がとられる場合がある

つまり、自由に開業できるという原則は残しつつも、「地域医療への責任」を明確に求める方向へと舵が切られているのです。


3)現場の実感――都市部での開業は本当に“楽”なのか

私は4年前、江東区から目黒区へ開業の場を移しました。制度とは別に、実際に肌で感じることがあります。それは、目黒区のような医療機関が多い地域では、単に「眼科を開業しました」というだけでは、安定した存続は決して容易ではないということです。

患者さんは情報を持ち、比較もし、専門性や特色を見極めます。白内障、緑内障、神経眼科、ドライアイ、近視進行予防など、それぞれに得意分野を持ち、地域の中で「ここに相談したい」と思っていただける存在でなければ、選ばれにくいのが現実です。

都市部の開業は「医師が多い=競争が激しい」という側面を持ちますが、それは裏を返せば、医療の質や専門性が常に問われる環境でもあります。行政が制度で調整しなくても、市場原理の中で自然淘汰が起きている面も否定できません。


4)自由開業制はどうなるのか

今回の制度は、自由開業制を一挙に否定するものではありません。しかし、開業のハードルが心理的・実務的に上がるのは確かでしょう。

若手医師にとっては、事前届出や協議参加、追加機能への対応は負担です。一方で、都市部の需要や生活環境の魅力が強ければ、開業は続く可能性もあります。区域外へ“横滑り”する動きも出るかもしれません。

重要なのは、医療の本質が「場所」だけで決まるわけではないという点です。医師過多区域であっても、地域に必要とされる医療を提供できれば、存在意義は生まれます。逆に、制度で抑制しても、医療の質や地域との関係づくりが伴わなければ、偏在の問題は根本的には解決しないでしょう。


これからの都内開業医に求められるもの

今後の都市部開業に必要なのは、「どこで開くか」よりも、「何を担うか」という視点ではないでしょうか。

  • 地域の医療機関との連携

  • 専門性の明確化

  • 在宅や紹介受診への柔軟な対応

  • 患者さんとの信頼関係

制度は枠組みをつくりますが、医療の質と継続性を支えるのは、日々の診療の積み重ねです。

自由開業制は形を変えながら続いていくでしょう。ただしそれは、「自由」だけでなく、「地域への責任」とセットになった時代へ移行しているのかもしれません。


出典

  • 『東京保険医新聞』2026年2月15日号「“外来医師過多” 都内は17区が候補」

  • 厚生労働省「医師偏在対策に関する資料」

  • 「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」

  • 社会保障審議会関連資料(保険医療機関指定期間の見直し等)

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