眼瞼痙攣 三村治
「神経眼科初めの一歩」(編集:木村亜紀子、大鹿哲郎)から眼瞼痙攣の章を読み直して抄出してみます。従来から唱えられていた基本的知識のほかにも、「眉毛が眼窩上縁を超えて下がるシャルコー兆候」、新しいボツリヌス製剤への期待など新しい知識も取り入れられました。清澤注も加えました。ボトックスを打つ前には3つの瞬目テストを行う事は今や必須と思われます。
1診断の流れ
主訴は「まぶしい」が最多
多くはまぶしいと訴えて受診する。目が明けにくい、瞼が下る、眼が乾く、目がショボショボする:などの不定愁訴。眼瞼が痙攣するとは訴えない。前医ではドライアイでの治療が多く、眼瞼下垂手術までしている例もある。
Ⅱ、眼所見と検査所見
明室での視診と瞬目テストが重要:
何より暗室でなく明室での視診が重要。眼瞼痙攣では眉毛の位置が下降(これをシャルコー兆候と呼ぶ)。瞬目テストを行う。軽瞬テスト:眉を動かさず軽い歯切れのよい瞬きをゆっくり。(強い瞬きになる、リズム乱れ、目を瞑る)。速瞬テスト:早く軽い瞬き10秒。(30回出来ない、強い瞬きの混入)、強瞬テスト:強く目を閉じ素早く開ける動作を15回(1-2回素早く開けない、開く動作が遅いなど)
Ⅲ. 疾患概念
診療科別で異なる重症度
脳神経内科:眼瞼痙攣は、比較的重症の局所ジストニアでボトックスが有効だが、神経内科では早期例は診断できない。ベースには大脳基底核の運動抑制システムの機能障害があると考えられている。抗不安薬や向精神薬(デパス、マイスリー、レンドルミン、サイレースなど)の連用による薬剤性のものがある。パーキンソン病、進行性核上麻痺などによる症候性のものもある。
Ⅳ. 治療
- 内服薬には保険適応なし、まず遮光レンズ装用から
ボトックス以外で行われる多くの治療にはまだエビデンスがない。眼瞼痙攣の羞明軽減に有効なエビデンスの有る眼鏡レンズがFL41(バラ色レンズ,エッシェンバッハ社アクニスのダーク),ホーヤ社レチネクス、東海光学ルミレスYGやYL)。これらを遮光レンズと総称する(清澤注:サングラスとして購入されたものでは不足)。感覚トリックのクラッチグラスも有効。
- 保険適用の薬剤はBTX-A(ボトックス®)のみ
現在はボトックスが唯一の保険適用注射薬。打つ場所には術者により修正もできる。(鼻根筋と鼻筋横部(注:清澤は三村式と呼称している)眼科では2.0-4.0mlに溶解、脳外科は1mlに溶解することが多い。(注:清澤は1.3mlに溶解しています)。多い合併症は皮下出血、眼瞼下垂、薬剤の拡散を避けるため注射後のマッサージも避ける。精製度が高く廉価なInco-BTXの早期認可が期待される。(清澤にはこの情報はまだ入っていない)
- 患者満足度の為には注射時疼痛の軽減が必要
30分前のリドカインテープ、エムラクリームなどを使用。疼痛が軽度なら保冷剤で眼周囲を冷却。細い31-32G針、針のベベルとメモリを上にして回転を避ける。
- 注射効果の機序の説明が重要
脳で起きている疾患を抹消注射で改善しようとする対症療法であることを説明する必要がある。遮光レンズなどを使用しながら注射すると効果が自覚でき、80%の患者が定期的に注射を受ける。
- 反復注射時期は患者の決定で
自覚効果は1週間以内に出現し、2週で最大、2か月持続して。3‐4か月で徐々に減衰・焼失。兵庫医大では投与時期を患者が決める。眼瞼痙攣はBTX-A反復注射で間者満足度も上がる傾向。
Ⅴ、今後の展望
費用軽減にはXenomin®の認可を
ボトックス治療の患者負担は殆んど薬剤費。薬価は、高齢者や定年退職者には不評。今後より安価なinco-BTXが認可される可能性が高く、Xeominが認可されれば治療を受けられる患者の増大につながる可能性がある。
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