網膜色素変性症(RP)についての説明
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症状 網膜色素変性症(RP)は遺伝性の網膜疾患で、加齢とともに網膜の視細胞が徐々に機能を失うことによって発症します。初期症状として、暗い場所での視力低下(夜盲)や視野の狭窄が見られます。進行するにつれて中心視野にも影響が及び、最終的には矯正視力の低下(失明)に至ることがあります。ただし、病状の進行速度や重症度は個人差があります。
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診断 網膜色素変性症(RP)の診断は、以下の方法で行われます。
- 視野検査: 視野の欠損を確認します。初期段階では視野が狭くなる視野狭窄が特徴的です。
- 網膜電図(ERG): 網膜の視細胞の機能を測定する検査で、RP特有の電気信号の減弱を検出しますが、最近は診断確定などで必要な時以外は省略されることが多いです。
- 眼底検査: 視神経の萎縮や網膜の色素沈着など、RPに特徴的な所見を確認します。飛鳥状の色素沈着が特徴的ですが、色素沈着が強くない症例も存在します。
- 遺伝子検査: RPは遺伝性疾患であるため、大病院では関連する遺伝子変異を特定するための検査を行い、確定診断を行うこともあります。
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治療 現在、RPに対する根本的な治療法は存在しませんが、病状の進行を遅らせるための治療やサポートがいくつかあります。
- サングラスの処方: 網膜への強い光の照射を避けるためのサングラスの使用は、実際的に行える最も有効な症状の進行を遅らせる方法です。
- ビタミンAの補充: 一部の研究では、ビタミンAの補充が進行を遅らせる可能性が示唆されていますが、医師の指導のもとで行う必要があります。
- 遺伝子治療: 最近の進歩により、特定の遺伝子変異に対する遺伝子治療が研究されており、一部の症例で効果が報告されています。
- 人工網膜: 失われた視機能を部分的に回復させるための人工網膜デバイスが開発され、重度の視力喪失を持つ患者に対して使用されることがあります。
- 視覚リハビリテーション: 視野が狭くなった患者さんが日常生活を送るためのリハビリや補助具の使用が推奨されます。
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最近の研究 近年、RPに関する研究が進展しており、以下のような新しい知見が得られています。これらが即時に利用できるわけではありませんが、今後の治療に対する期待が高まっています。
- 遺伝子編集技術の進歩: CRISPR-Cas9などの遺伝子編集技術を用いた治療法が開発されつつあり、特定の遺伝子変異を持つ患者に対する治療の可能性が高まっています。
- ステムセル治療: 失われた視細胞を再生するためのステムセル治療の研究が進んでおり、臨床試験も始まっています。
- 新規薬剤の開発: 視細胞の死滅を抑制する新しい薬剤が開発されており、これらの薬剤が病状の進行を遅らせる可能性が示されています。
網膜色素変性症は進行性の病気であり、患者さんの日常生活に大きな影響を与える可能性がありますが、近年の研究によって新たな治療法が見つかる可能性が広がってきています。患者さんには、定期的な検査を受け、最新の治療法やサポートを活用していただくことが重要です。
【追記】
難病情報センター: 指定難病90(網膜色素変性症)における診断基準と重症度分類
- 自覚症状:
- 夜盲
- 視野狭窄
- 視力低下
- 羞明(または昼盲)
- 臨床検査所見:
- 眼底所見:
- 網膜血管狭小
- 粗造な網膜色調
- 骨小体様色素沈着
- 多発する白点
- 視神経萎縮
- 黄斑変性
- 網膜電図の異常(減弱型、陰性型、消失型)
- 眼底自発蛍光所見で網膜色素上皮萎縮による過蛍光または低蛍光
- 光干渉断層像で中心窩におけるエリプソイドゾーン(EZ)の異常(不連続または消失)
- 眼底所見:
- 診断カテゴリー:
- 進行性の病変であること。
- 自覚症状で、上記のいずれか1つ以上がみられること。
- 眼底所見で、上記のいずれか2つ以上がみられること。
- 網膜電図で、上記の所見がみられること。
- 炎症性または続発性でないこと。
- 上記の1~5の全てを満たす場合、指定難病としてのRPと診断します。
- 重症度分類:
- 重症度分類のII、III、IV度の者を対象とします。
- I度: 矯正視力 0.7以上、かつ視野狭窄なし
- II度: 矯正視力 0.7以上、視野狭窄あり
- III度: 矯正視力 0.7未満、0.2以上
- IV度: 矯正視力 0.2未満
- 注1: 矯正視力、視野ともに、良好な方の眼の測定値を用います。
- 注2: 視野狭窄ありとは、中心の残存視野がゴールドマンI-4視標で20度以内とします。
- 指定難病
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