月刊保団連の特集「食べ物が足りなくなる前にPart 2」は、日本と世界における食糧危機の現状とその深刻な影響について取り上げた重要な記事です(Sep 2024.No1431)。保団連は全国の医師や歯科医師による任意団体で、医療や社会保障の問題に対して積極的に提言を行っており、今回の特集もその延長線上にあります。
まず、世界全体で懸念されている食糧危機についてですが、この問題は複雑な要因が絡み合っており、特にロシアとウクライナの戦争や気候変動が食料供給に与える影響が大きいことが指摘されています。ウクライナは世界的な穀物輸出国として知られていますが、戦争によってその供給が大幅に減少し、世界的な穀物の不足と価格高騰が生じています。また、化学肥料の供給減少も農業生産に影響を与えており、特に輸入に依存している国々にとっては深刻な状況が続いています。
さらに、気候変動による異常気象、例えば干ばつや洪水などが農業に与えるダメージも無視できません。これらの影響で農作物の収穫量が減少し、特に食糧輸入に頼る国々はその打撃を強く受けることになります。経済的な要因としても、エネルギー価格の上昇や肥料のコスト増加が食糧価格を押し上げ、結果として多くの国で食糧危機が発生する恐れがあります。
日本においても、輸入食料への依存度が高いことから、こうした世界的な食糧危機の影響を受けやすい状況です。特に日本は、米の減反政策や低い食料自給率のため、食糧輸入が途絶えるか価格が急騰すれば、深刻な供給不足が発生する可能性があります。鈴木宣弘氏が述べているように、日本の食料自給率はわずか37.6%に過ぎず、野菜の種や化学肥料も輸入に依存している現状は非常に危ういと指摘されています。このような状況下で、政府は早急に対策を講じるべきですが、現時点では十分な危機感が感じられない点が問題視されています。
また、記事では「クワトロ・ショック」と呼ばれる4つの大きな危機、すなわちコロナ禍、中国の大量購入、異常気象の常態化、そして紛争リスクが、今後の食料供給を一層不安定にする要因として挙げられています。このような国際的な状況があるにもかかわらず、日本政府が食料自給率の向上に対して積極的に取り組んでいない点が批判されています。
特集では、食料危機の影響を最も強く受けるのは大都市圏であり、特に輸入に依存している東京や大阪などの都市では、供給不足が現実の問題として直面する可能性があると指摘されています。さらに、国が食料自給率の向上を放棄し、農漁業や畜産業に対する支援を縮小していることは、長期的な視点から見て国民の命や健康を危険にさらすことにつながるとしています。
もう一つ重要な点は、グローバル企業がこの食料危機の中で利潤を追求し、日本政府がその意図に加担しているという指摘です。特に水稲農業が攻撃の対象となっており、食料生産に対する支援が不十分であることが問題とされています。鈴木宣弘氏の警告によれば、このままでは日本は危機に対して無防備な状態であり、戦う前に飢えてしまうという危険すらあります。
最終的に、政府は今すぐ財政出動を行い、食料安全保障を強化するための具体的な対策を講じる必要があります。食料危機は国民の健康と命に直結する問題であり、これ以上の遅れは許されません。価格が安いものには必ず理由があるとし、食料の安全と安定供給を確保するために、国が主導する政策の実行が急務であると強調されています。
この特集を通じて、世界的な食糧危機と日本の脆弱な食料事情が浮き彫りにされており、今こそ政府と国民が一丸となってこの問題に対処する必要があることが強調されています。
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