神経眼科

[No.2973] ビジュアルスノウ症候群患者に頻繁に報告される「暗所視障害」について

ビジュアルスノウ症候群(視覚雪症候群)の患者に頻繁に報告される「暗所視障害(ニクタロピア)」について

暗所視障害(ニクタロピア)は、薄暗い環境や暗い場所で視力が低下する状態です。通常、網膜色素変性症やビタミンA欠乏症などの眼疾患に関連しますが、視覚雪症候群(Visual Snow Syndrome, VSS)の患者にも頻繁に見られる症状です。視覚雪症候群は、視界全体に絶え間ない「視覚的な雪」(テレビのノイズのようなもの)が現れることが特徴で、他の視覚的障害(残像、光過敏症、暗所視障害など)も伴います。

暗所視障害のメカニズム

視覚雪症候群における暗所視障害の正確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの仮説があります。

  1. 大脳視覚野の過剰興奮: 視覚雪症候群では、脳の視覚野が過剰に興奮しており、通常よりも視覚信号を過剰に処理していると考えられます。この過剰な活動が、薄暗い環境での視覚情報の処理に影響を与え、脳が正確に視覚を捉えることが難しくなる可能性があります。

  2. 暗順応の障害: 暗順応とは、目が暗い環境に適応する過程です。視覚雪症候群の患者では、この適応が遅延し、明るい場所から暗い場所に移動した際に、視力が低下することがあります。

  3. 網膜機能の異常: 視覚雪症候群(ビジュアルスノウ症候群)は主に神経系の疾患とされていますが、暗所での視覚信号伝達において網膜の機能に影響がある可能性も指摘されています。標準的な網膜検査では異常は確認されないものの、機能的な問題がある可能性があります。

臨床所見と管理

視覚雪症候群による暗所視障害を診断する際、OCTや眼底検査では異常が見られないことが多いです。対応としては、環境調整や場合によっては神経学的治療が検討されます。

参考文献:

  1. Schankin, C. J., Maniyar, F. H., Digre, K. B., & Goadsby, P. J. (2014). “‘Visual snow’—a disorder distinct from persistent migraine aura.” Brain, 137(5), 1419–1428. doi:10.1093/brain/awu050.

    • 視覚雪症候群の症状とメカニズムに関する基本的な論文。特に視覚的な症状の神経学的原因について詳述しています。
  2. Puledda, F., & Goadsby, P. J. (2019). “Visual Snow Syndrome: A Clinical and Phenotypical Description of 1100 Cases.” Neurology, 93(23), e2227-e2235. doi:10.1212/WNL.0000000000008576.

    • 視覚雪症候群の症例研究。暗所視障害を含む視覚的問題に関する報告を含んでいます。
  3. Eren, O., Rauschel, V., & Schankin, C. J. (2020). “Visual Snow Syndrome: A Spectrum Disorder with Hypothalamic and Metabolic Involvement.” Cephalalgia, 40(11), 1240-1249. doi:10.1177/0333102420953034.

    • 暗所視障害を含む視覚雪症候群の全体的な症状と、その神経生理学的背景についての研究。

これらの参考文献は視覚雪症候群と関連する暗所視障害の理解を深める助けとなり、患者への説明に役立つでしょう。

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