バスケットボールの授業中に、ボールが顔面、特に眼に当たり、結膜下出血を伴う外傷性結膜炎を呈した患者を診察しました。この患者には、片眼の打撲による軽度の前房出血が見られますが、私は隅角乖離を疑っています。ただし、現時点でこれ以上の前房出血を避けるため、本日は隅角鏡検査は行わず、眼底と眼圧が正常であることだけを確認しました。このような眼球打撲症例の診断と治療において注意すべき点は何でしょうか?
眼球打撲症例の診断における注意点は以下の通りです。
-
隅角乖離(iridodialysis)および外傷性緑内障のリスク
眼球打撲では隅角乖離がよく見られ、角膜周辺部と虹彩根部のわずかな断裂により前房出血が伴うことがあります。隅角鏡検査が困難な場合は、後日眼圧を定期的にモニタリングし、外傷性緑内障が生じていないかを確認する必要があります。隅角の詳細な検査のタイミングは慎重に選びましょう。 -
前房出血(hyphema)
前房出血がある場合、眼圧の急激な変動を避けることが重要です。特に再出血のリスクが高く、1週間以内の再発が問題になることがあります。患者には安静を指導し、頭を高くして生活するように勧めます。必要に応じてトラネキサム酸などの抗プラスミン薬が使用されることがあります。これはプラスミンの働きを抑えることで再出血を防ぐ効果が期待されます。 -
網膜裂孔や網膜剥離の確認
打撲による網膜損傷(裂孔や剥離)はすぐには現れないことがあるため、症状がなくても網膜周辺部を精査することが重要です。後日、OCTや追加の網膜検査を行うことも推奨されます。 -
水晶体損傷
打撲による水晶体損傷から白内障(外傷性白内障)や亜脱臼が生じることがあります。特に衝撃が強い場合、視力低下が初期には顕著でなくても、位置異常がないか注意深く観察する必要があります。 -
定期的なフォローアップ
初回検査で問題がなくても、後日合併症が発生する可能性があるため、定期的なフォローアップが必要です。眼圧の変動や網膜異常を監視します。必要に応じて、UBM(超音波生体顕微鏡)やOCTを用いた詳細な検査も検討されます。
また、学校での事故に伴う治療費を公的機関に請求する際は、(→リンク)「日本スポーツ振興センター災害共済給付制度」に基づく診断書の記入が必要となることがあります。この制度は、学校での事故やケガに対する医療費や後遺障害への給付を行う仕組みです。
このように、眼球打撲症例の診断に際しては、隅角乖離や前房出血、網膜損傷の有無を慎重に評価し、適切なフォローアップと治療が重要です。
コメント