小児の眼科疾患

[No.483] 明るみに:「子ども虐待対応の手引き」の中の“乳児揺さぶられっこ症候群の恣意的な記述” による災禍が続いている。

清澤のコメント:誤った乳児虐待(乳児揺さぶられっこ症候群)が疑われて、親子が児童相談所の手で引き離されるという事例を追及している藤原一枝先生が「今日の薬は」というコラム薬事新法32472022)をお届けくださいました。「病院は届けろというガイドラインに従って」届け出た。児童相談所では不作為を責められることを恐れて、そうかもしれないとして親子引き離しに向かったといういつもながらのお粗末な行動です。そろそろ、最近の判例で親子引き離しが否定され続けていることを全国の児童相談所では認識していただきたいものです。(自由が丘清澤眼科にも私の共著で藤原先生らの作った成書とパンフレットが数部残あります。ご請求ください。)

  ――――今日のクスリは(259)記事引用――

藤原QOL研究所 代表 元都立墨東病院脳神経外科医長 藤原一枝

 脳神経外科の外来診察室に,42年前に乳児期の 化膿性髄膜炎の後遺症の水頭症を手術したので, 器具と機能のチェックが一生必要な男性が久しぶりに現れた。最初の執刀医だった私に警備員として働く近況報告をした後で,彼は「薄給だが,甥 や姪にお年玉も渡せている」と胸を張った。  時代を思い起こし,感慨にふけることになった。 彼はインフルエンザ桿菌による髄膜炎だった。40 年前には乳幼児が年に1000人は罹患し,抗生物質 だけでは治療しきれないコワイ病気だった。ところが,その後に開発されたHib(ヒブ)ワクチンが 2011年から公費負担になり,2013年度から定期予防注射に組み込まれ,なんと2014年度はこの菌による髄膜炎罹患者はゼロに達している。彼の甥や 姪は,同じ病気にはならないのである!

 

 ワクチン行政の朗報から遠く離れて,「子ども虐待対応の手引き」の中の一部の恣意的な記述による災禍が続いている。乳幼児の事故による 頭部外傷を認めない医師グループが独自に判定のルールを決め,彼らが児童相談所や警察や検察を教育してきたので,末端である現場においては, 硬直した対応に終始することになる。

 その例を一つ提示できる。

 前回披露した千葉県八千代市の中村型の赤ちゃんは,一時保護中1 回の面会も許されないまま,4ヵ月を経て,24日に保護解除されたが,条件は家庭への祖父の同居半年であった。

 そこで,一時保護解除後の行政処分(児童福祉法27 12号に基づく児童福祉司指導)について, 2 10日に千葉県に審査請求をした。 その内容は,「事故か虐待か判断できない以上, 適切に児童福祉司指導を行うことはできないはずである。指導自体意味をなさず,不要であり,違法と主張する」だった。

 令和4314日付けの弁明書が県庁の審査員を通じて,自宅に届いたのは,317日だった。

  弁明書で明らかになったのは,以下だった。

   ―――

 児童相談所は法に従い保護をした

 児童を保護観察した限り虐待はないように 感じた

 二つの法医鑑定をした結果,両見解が別れ必ずしも虐待をしたとは断言できなくなった

 ②③により解除を検討した

 但し,虐待がなかったとも断言できない以上,児童福祉法に基づき生活環境を変える処 分(祖父の同居)を行ったことは妥当であり,本申請の却下を求める (後略) (下線は著者が付けたもの)

  ――――

 考えをまとめていた両親は,即座に反論書を作り,反論期限の46日よりはるかに早く,321日には書類を送付した。その内容は

   ――――

 児童相談所は法に従い保護をした

 児童を保護観察した限り虐待はないように 感じた

 二つの法医鑑定をした結果,両見解が別れ 必ずしも虐待をしたとは断言できなくなった

 ②③により解除を検討した

 但し,虐待がなかったとも断言できない以上,児童福祉法に基づき生活環境を変える処 分(祖父の同居)を行ったことは妥当であり,本申請の却下を求める

  ――――

 考えをまとめていた両親は,即座に反論書を作 り,反論期限の46日よりはるかに早く,321日には書類を送付した。その内容は,

――――

 病院からの通告を判断するのは,児童相談所である。東京女子医大八千代医療センターに確認したところ,積極的に虐待とも虐待の疑いありとも言わず,通告したことが明らかになった。 通告を受け,一時保護か否かの2択からの選択を決める権限は,児童相談所にあり,児童相談所が選択した。

 児童相談所は,「本件硬膜下血腫・眼底出血は,通常の後方転倒では起こりえない怪我であり,本件児童の頭が強く揺さぶられた可能性がある」(弁明書1頁),「家庭内での後方転倒では 通常起こりえないような重度な頭部外傷」(弁明書2頁)という独自の考えに固執し,新知識や中村型の存在を考慮できない。頭蓋内出血は すべて重症と,CT時代にも信じ込み,虐待の見逃しを恐れている。

 児童相談所は一時保護を短くしようとか,親子分離に配慮することは全くなかった。児童福祉法23項は「国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに,児童を心身ともに健やかに 育成する責任を負う」とあるが,それに反する 行動に終始した。

 児童相談所は虐待か否かの調査を行い,二つの法医学教室の意見では断定に至らなかったが,更に他(脳神経外科など他の専門領域の医師など)に意見を求めなかった。更なる検証の機会を省き,証拠や判定材料がないのに,児童虐待防止法11条を持ち出し,「虐待を行った保護者」との判断をした。

 本件処分は誤った前提に基づき行われており, 前記のとおり違法,不当で不当であるから,速やかに 取り消されるべきである。

   ――――

今回,弁明書の中に,肉声を聞いた覚えがしたので,そのまま記述する。児童相談所職員の能力と苦悩が伝わってくる貴重な文面だ。

   ――――

  二つの医療機関に対し受傷機転調査を行い, 受傷原因について法医学の意見を求めたところ, 一方の法医学意見では,頭が揺らされ,脳が揺さぶられたことにより受傷した可能性が高いと指摘されたが,他方の法医学意見では,父母の話す受傷機転から本件児童の外傷は起こり得るとし,立位からの後方転倒,転落などにより頭部に加わった軽微な外傷に伴う硬膜下血腫(偶発的外傷)と考えられるが,揺さぶりなど,虐待による乳幼児頭部外傷(以下,「AHT」という。)が存在した可能性は厳密には否定できないという意見であった。

 両者から全く異なる意見が提出されたため, 法医学意見によって虐待か事故かの真偽を特定することは困難であった。(後略)

  ――――

続けて,児が良い環境で育ち,正常な発達であ ることを認めた上で,弁明書は次になる。

   ――――

 以上により,児童相談所は,つかまり立ちか らの後方転倒による外傷によって生じた可能性が高いと判断し,家庭引き取りに向けた調整を行うこととした。しかし,本件児童の硬膜下血腫・眼底出血は,家庭内での後方転倒では通常起こりえないような重度な頭部外傷であり法医学意見によっても虐待の可能性が否定されたわけではない。このため,今後,家庭内で同様の受傷(事故)が起こることのないよう安全プランの構築をする必要があり,(後略) (下線は著者が付けたもの)

   ――――

 千葉県中央児童相談所長においては,法医学者以外の意見を聞くことは眼中になく,親子の幸せなど考えてはいないことが明白になった。

 *  

256回で披露した,長期親子分離の不当性を訴えた大阪地方裁判所の判決が, 3 24日に出た。

 翌朝,関東では毎日新聞が最も大きく報じていた。「児相の一時保護継続は違法 大阪府に賠償命令 大阪地裁判決」という見出し。一時保護を 続けた児相の対応を違法と認定し,府に100万円の 賠償を命じた。

記事によると,山地修裁判長は,家裁審判後の児相の対応について,「中立公平な司法機関から鑑定書を再検討するよう求められたのに,真摯に検討せず鑑定書に安易に依拠していた」と批判。児相が速やかに別の医師に意見などを求めれば,保護の継続は不要と認識できたとして,一連の対応を違法と判断したそうだ。

児相の面会制限も違法と認定した上で,山地裁 判長は「本来なら共に過ごしながら,毎日の成長 を見守るというかけがえのない時間が失われてし まった」と指摘した。一方で,児相の最初の保護開始決定については,安全性確保の観点から合理的だったとした。

 原告代理人の秋田真志弁護士(大阪弁護士会) による「児相側は一時保護の根拠を開示していく 姿勢が必要だ。今回の判決は漫然とした親子分離を許さないという大きな判断が示され,意義がある」とのコメントもあった。

一時保護判断の透明性や適正性が長年の課題であるところ,政府は34日,保護開始の要否について,裁判官による司法審査の導入を盛り込んだ児童福祉法改正案を閣議決定したので,今国会で審議されるところだ。

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