全身病と眼

[No.484] 脳脊髄液減少による視機能異常, 神経眼科,記事紹介

「山上 明子, 脳脊髄液減少による視機能異常」が、神経眼科, 2022, 39 巻, 1 号, p. 26-33に公開されました。この疾患はまれに相談を受けることがあります。眼科関連では動眼神経麻痺、外転神経麻痺、視野狭窄、羞明なども報告されています。むち打ちやその他の外傷歴でもあれば疑いやすいですが、症状としてはなかなかこの疾患の検索には向かいにくいです。

 公開日 2022/03/29,

https://doi.org/10.11476/shinkeiganka.39.26, https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinkeiganka/39/1/39_26/_article/-char/ja,

抄録:

要約:脳脊髄液が減少する病態では起立時に増悪する頭痛・頸部痛,めまい,耳鳴り,視機能異常,嘔気,倦怠感,疲労感など多彩な症状を呈する.また,多くの症例が様々な視機能異常を自覚しており眼痛,ピントが合わない,単眼複視,複視,視力低下,羞明,視野障害などを自覚して眼科を受診している.眼所見としては輻湊痙攣,原因不明の視力・視野障害,求心性視野狭窄を呈する例があるが,眼科的に異常がみられない症例も多い.今回は,眼科を受診してその後,脳脊髄液漏出症と診断された4例について提示する.眼所見以外の症状にも注目し,事故や外傷の既往を過去にさかのぼって確認し,脳脊髄液減少症が疑われれば専門医に紹介していく必要がある

  ーーーーーー

脳脊髄液減少症について(茨城県のページから https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/yobo/shitpei/20160803.html)

東京都ならば:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/nanbyo/portal/shikkan/joho/disease01.html

  脳脊髄液減少症とは、脳脊髄液が“減少状態”になるために、頭痛をはじめとする種々の症状が出現する疾患です。

  【原因】

 ・特発性:外傷などの明らかな原因がない場合

 ・外傷性:交通事故、スポーツ、日常生活上の転倒、打撲、暴力など

 ・医原性:脊椎手術、腰椎穿刺、整体治療など

 ・その他:出産など

 【症状】

 ・急性期の主症状としては、起立性頭痛が重要であるが、頚部痛、悪心、めまい、耳鳴りなどを伴うことも少なくない。

 ・慢性期症状として

 (1)頭痛(起立性が主)、頚~腰痛、四肢痛などの疼痛症状

 (2)全身倦怠感、易疲労性

 (3)めまい、耳鳴り、視機能障害(視力低下、まぶしい等)などの脳神経症状

 (4)動悸、息切れ、消化器症状(悪心、食欲不振、下痢など)などの自立神経症状

 (5)注意力低下、記憶力低下、うつなどの高次脳機能症状

 (6)その他、不眠、易感染性、内分泌症状など

 治療法には、ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)があります。本人の静脈血を硬膜外腔の髄液が漏れている周辺に注入し、血液が固まる性質を利用して漏れを防ぐものです。

 2016年4月より、国の診断基準で「脳脊髄液漏出症」と診断された場合、ブラッドパッチ療法が保険適用になりました。

注:治療法
 脳脊髄液漏出症に有効な治療法として、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)があります。この治療法は、脊椎硬膜外腔に患者さんご自身の血液(自家血)を注入して、硬膜外腔組織の癒着・器質化によって穴をふさぎ、髄液の漏出を止めます。自家血は20~30cc採血し、造影剤を加えてレントゲン透視下で硬膜外に注入します。某病院のHPを見ますと:治療は入院にて行い、注入後は4日~1週間程度、安静にしていただきますとのこと。

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