肺MAC患者の診療で注意すべき眼症状は?その兆候、診察所見、治療法、および予後を説明します。
肺非結核性抗酸菌症:MAC症とは、「非結核性抗酸菌症(NTM症)」の一種で、マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex, MAC)による感染症を指します。主に肺に感染を起こしますが、免疫が低下している場合には全身の臓器に影響を及ぼすことがあります。この患者において、診療で注意すべき眼症状にはいくつかのポイントがあります。特に、全身性の感染症や治療に関連した眼の合併症に注目する必要があります。以下に、具体的な兆候、診察所見、治療法、および予後について説明します。
注意すべき眼症状
- 全身性の感染症による眼の症状
MAC症は慢性的な感染症で、免疫が低下している患者では眼にも影響を及ぼすことがあります。- 結膜炎や虹彩炎など、眼の前部の炎症。
- ブドウ膜炎や網膜炎などの後部眼炎症。
- 眼球結膜の肉芽腫性病変が稀にみられる。
- 治療薬に伴う眼の副作用
MAC症の治療には、エタンブトールやクラリスロマイシン、リファンピシンなどが用いられます。これらの薬剤は眼への副作用があるため、特に注意が必要です。- エタンブトールによる視神経炎(視力低下や視野障害、色覚異常)。
- クラリスロマイシンによる稀なアレルギー反応としての眼症状。
- リファンピシンによる涙液の赤橙色変化や一時的な視覚異常。
兆候と診察所見
- 患者が訴える症状
- 視力の低下(特に中心視力の障害)。
- 色覚の変化(赤や緑の識別が難しい)。
- 目の痛みや異物感。
- 診察所見
- 視力検査:視力低下がある場合、エタンブトール性視神経炎の可能性を考慮。
- 視野検査:中心暗点や視野狭窄が特徴的。
- 眼底検査:視神経乳頭の蒼白化や腫脹がみられることがある。
- 色覚検査:赤緑の識別障害を確認。
治療法
- 薬剤性眼症状への対処
- エタンブトール性視神経炎:エタンブトールの投与中止が第一選択。症状は中止後、数週間から数か月で改善することが多いが、遷延することもある。
- 予防的管理:エタンブトール使用中は定期的な視力検査や色覚検査を行い、早期の異常発見を目指す。
- 感染症による眼炎症
- 炎症抑制:ステロイド点眼や全身投与を検討。ただし、感染症の制御が優先される。
- 肉芽腫性病変:病変部位の評価に応じた抗菌薬の調整。
予後
- 薬剤性視神経炎
- エタンブトール中止後、症状が改善することが多いが、長期間の使用や高用量の場合、回復しない可能性もある。
- 定期的な視機能検査が予後を左右する重要な要素。
- 感染症に伴う眼合併症
- 感染制御が成功すれば眼症状も改善することが多い。
- ただし、肉芽腫性病変が重度の場合は後遺症として視力低下が残る可能性あり。
診療のポイント
- エタンブトールなどの治療薬使用時には、視力や色覚の変化について患者からの訴えを慎重に確認する。
- 眼の症状が出現した場合、薬剤の中止や代替治療の検討が必要。
- 抗菌治療とともに、眼科医との連携が重要。
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