全身病と眼

[No.299] 疥癬(かいせん):Scabiesとは

疥癬:Scabiesとは(James G. H. Dinulos ,  MD, Geisel School of Medicine at Dartmouthの記事を参考に)

清澤のコメント:日本医師会雑誌2021,11に谷口裕子先生が、「虫刺症と痒み-疥癬を中心に」というトピックス記事を書いています。現在九段坂病院の皮膚科部長ですが、東京医科歯科大学でアトピー性皮膚炎の眼症状をまとめるお仕事をその昔一緒にさせていただいた方です。

谷口先生記事の要点は、「虫刺症で、即時型反応では刺された直後に痒みと膨疹を生じ、遅延型反応では1-2日後より丘疹と水泡を生じる。疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生しておきる感染症で、通常疥癬と角化型疥癬(ノルウェー疥癬)がある。その症状は、腹部、手掌、陰部など様々な場所に丘疹を生じるもので、顕微鏡やダーモスコープでダニを検出する。角化型疥癬の典型例では顔面にも雲母状の鱗屑を伴う紅疹が見られる。治療ではフェノトリン外用が勧められる。」ということです。

今日はMSD マニュアル(最終査読/改訂年月 2018 9月)を参考に疥癬の記述をまとめてみます。ただし、私は眼科医ですから、具体的症例は皮膚科に相談することにしましょう。

ーーー記事抄出ーーーー

疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes scabiei])による皮膚感染症である。疥癬では,激しいそう痒を伴う病変が生じ,指趾間,手関節,腰部,および性器部に紅色丘疹と疥癬トンネルが形成される。診断は診察と皮膚擦過物の検査に基づく。治療は抗疥癬薬の外用によるが,ときにイベルメクチンの内服も用いる。

病因

疥癬は,ダニの一種である疥癬虫(ヒゼンダニ[Sarcoptes scabiei var. hominis])により引き起こされるが,角層内にトンネルを掘って生息している。疥癬は物理的接触によって容易にヒトからヒトへ感染するが,おそらくは動物および媒介物を介した感染も生じる。主な危険因子は過密環境である。

疥癬

理由は不明であるが,角化型疥癬は免疫抑制患者,コルチコステロイドなどの免疫抑制薬を長期使用している患者で頻度が高い。感染は世界中でみられる。

症状と徴候

主な症状は強いそう痒で,典型例では夜間に悪化する。

古典型疥癬

指間部,手関節,肘関節屈側面,腋窩部,ベルトラインに沿った部位,および殿部下方に,まず紅色丘疹が出現する。成人では顔面が侵されることはない。疥癬トンネル(通常は手関節,手,または足にみられる)は疥癬に特有の所見であり,わずかに鱗屑を伴って蛇行する長さ数mmから1cmの微細な線として認められる。古典型疥癬では,通常ダニは1012匹しかいない。細菌の二次感染がよく生じる。

乳児疥癬

乳児では,手掌,足底,顔面,頭皮が侵され,特に耳介後部がよく侵される。高齢患者では,疥癬が強いそう痒を引き起こす一方で皮膚所見は不明瞭となることがあり,その場合は診断が困難となる。

その他の病型

角化型疥癬(ノルウェー疥癬)

角化型疥癬(ノルウェー疥癬)は,宿主の免疫障害のためにダニが膨大な数まで増殖することによって発生する;鱗屑を伴う紅斑がしばしば手,足,頭皮に生じ,広範に広がることがある。(3番目の図https://www.researchgate.net/publication/6399367_Problems_in_Diagnosing_Scabies_a_Global_Disease_in_Human_and_Animal_Populations/figures?lo=1)

結節型疥癬

© SPRINGER SCIENCE+BUSINESS MEDIA

結節型疥癬は,乳幼児でよくみられ,残存するダニに対する過敏症が原因となる可能性がある;結節は通常紅斑性で,大きさは56mmであり,鼠径部,性器,腋窩部,および殿部に生じる。

頭皮疥癬は乳児および易感染者に生じ,皮膚炎に類似することがある。

臨床的評価

  • 疥癬トンネルの擦過物

診断は,身体所見(特に疥癬トンネル),確定診断は,疥癬トンネルの擦過物での顕微鏡検査にてダニの虫体,虫卵,または糞粒を検出することによる。検体をスライドガラスに乗せ,カバーガラスを被せる。(眼科では皮膚科に相談か?)

治療

  • ペルメトリンまたはリンデンの外用
  • ときにイベルメクチンの内服

主な治療法は抗疥癬薬の外用または内服である。ペルメトリンが第1選択の外用薬である(注:眼科医としては、これも皮膚科医に相談としよう)。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。