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40歳を過ぎた女性に両眼性の視神経萎縮が見られる場合に考えられる疾患
視神経萎縮とは、視神経が何らかの原因でダメージを受け、徐々にやせ細ってしまう状態です。視神経は目と脳をつなぐ重要な組織であり、これが障害されると視野が狭くなったり、視力が低下したりします。視神経萎縮が両眼に起こる場合は、単なる眼の病気だけでなく、全身の病気が関係していることもあります。特に40歳を過ぎた女性に見られる場合、以下のような疾患の可能性が考えられます。
1. 緑内障(正常眼圧緑内障を含む)
緑内障は視神経が徐々に障害される病気で、日本では40歳以上の20人に1人が罹患していると言われています。眼圧の上昇が原因となることが多いですが、日本人には眼圧が正常範囲内で起こる「正常眼圧緑内障」が多く見られます。この疾患でも視野が徐々に狭くなり、末期になると視力も低下しますが、頻度としてはそれ以外のものよりも多いので、まずはこれを考えてみます。
2. 視神経炎(視神経脊髄炎関連疾患を含む)
視神経炎は視神経に炎症が起こる病気で、多くの場合、片眼に起こりますが、再発を繰り返すと両眼にも影響が出ることがあります。特に「視神経脊髄炎(NMOSD)」は女性に多く、中枢神経の障害を伴う自己免疫疾患です。急激な視力低下や目の痛みが特徴で、早期治療が必要です。視神経炎の結果としての視神経萎縮があります。
3. レーベル遺伝性視神経症(LHON)
ミトコンドリア遺伝子の異常が原因で起こる遺伝性の視神経障害で、比較的若年の男性に多いですが、女性でも発症することがあります。発症後、数週間から数ヶ月で視力が急激に低下し、視神経萎縮を生じます。この疾患であれば遺伝子検査でほぼ確実に診断できます。
4. 圧迫性視神経症(脳腫瘍・視交叉部病変)
視神経の通り道に腫瘍ができると、視神経が圧迫されてその結果で萎縮することがあります。特に「下垂体腺腫」や「髄膜腫」などの良性の脳腫瘍が視交叉部を圧迫すると、両眼に視野障害が進行します。頭痛やホルモン異常を伴うこともあり、MRI検査で診断されます。これは特に見逃してはいけない疾患です。
5. 栄養障害性視神経症(ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏)
ビタミンB12や葉酸が不足すると、視神経が障害され異臭が進むことがあります。特にベジタリアン(菜食主義の人)や胃の手術(大きく胃を切除した場合)を受けた人、慢性的なアルコール摂取(ウェルニッケ症候群)がある人に起こりやすいです。視力低下の他に貧血やしびれを伴うことがあります。
6. 中毒性視神経症(薬剤・アルコール)
特定の薬剤(抗結核薬のエタンブトールや一部の抗がん剤その他)や過剰なアルコール・タバコ摂取が原因で視神経障害を起こすことがあります。長期間の服用や摂取歴がある場合は、視力低下の原因として疑われます。
7. 多発性硬化症(MS)
多発性硬化症は、時間と場所という2つの面に特徴を持つ「中枢神経系に炎症が起こる自己免疫疾患」です。視神経炎を繰り返すことがあり、徐々に視神経萎縮が進むことがあります。女性に多く、再発・寛解を繰り返しながら進行します。
まとめ
40歳を過ぎた女性で両眼の視神経萎縮がある場合、単なる眼の病気だけでなく、自己免疫疾患や全身疾患、栄養障害などが関係していることがあります。視神経萎縮は進行すると視力の回復が難しくなるため、早期に適切な検査を受けることが重要です。眼科だけでなく、神経内科や内科、脳外科での診察が必要な場合もありますので、気になる症状があれば早めに専門医に相談しましょう。
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