清澤のコメント:成人の視力検査及び眼鏡処方に関する手引き:(第3回分)6)プリズム眼鏡の部分(p174-180)の要点をまとめました。
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6)プリズム眼鏡
プリズムは三角柱の立体であり、光を基底方向に屈折させる特性を持つ。プリズム眼鏡は、屈折異常矯正レンズとプリズムレンズを組み合わせ、複視や眼精疲労、眼振、頭位異常の軽減を目的とする。プリズムは色収差や空間の歪みを生じるため、見え方に違和感を生じやすい。
(1)プリズム屈折力を眼鏡に付加する目的(適応)
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眼位ずれによる複視の消失(急性斜視、麻痺性斜視、SESなど)
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眼精疲労の軽減(間欠性外斜視など)
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頭位異常の軽減(麻痺性斜視、眼位性眼振など)
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眼振の制御(輻湊による抑制)
(2)プリズム眼鏡処方の基本的な留意点
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屈折異常を矯正した上で処方を行う。
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網膜対応が正常であることが原則。異常がある場合、複視が軽減せず、斜視角が悪化する可能性がある。
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眼鏡に組み込めるプリズムは5~10Δまで。それ以上はFresnel膜プリズムを使用する。
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累進屈折力レンズでは遠方と近方で同じプリズム度数になるため、眼位の逆転に注意。
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眼鏡レンズの光学中心を瞳孔中心からずらすことでもプリズム効果を得られるが、非球面レンズでは収差の悪化に注意。
(3)プリズム眼鏡処方検査に必要な知識
① 眼位定量に用いるプリズムのキャリブレーション(素材やメーカーによる違いに注意) ② 眼前でのプリズム前置方法(前額面位置に保持する) ③ 大きい斜視角の測定時、2枚のプリズム重ねは誤差が大きいため、左右に振り分ける。 ④ 上下偏位の補正で複視が消失することがある。 ⑤ 水平・上下のプリズムを合成・分解可能。
(4)プリズム眼鏡処方の実際
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複視:最小のプリズム度数で単一視を目指す。
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眼精疲労:斜位を原因とする場合、プリズムで眼位を中和。
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眼振:静止位を正面に移動するバージョンプリズム、輻湊を誘発するバージェンスプリズム、両者を併用するコンポジットプリズムを使用。
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頭位異常:頭位を正し、測定した斜視角をプリズムで中和。
(5)処方する際の注意点
① プリズム眼鏡は厚く重くなるため、フレーム選びが重要。 ② 視覚的な違和感(遠近感、距離感の変化)が生じることがある。 ③ プリズムにより眼の位置がずれて見え、外観に影響する。 ④ Fresnel膜プリズムは半年~1年で交換が必要。紫外線劣化に注意。
以上の点を考慮し、慎重にプリズム眼鏡の処方を行う。
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