神経眼科

[No.3376] レビー小体病と目の症状

レビー小体病と目の症状についての説明

幻視を示すことが多い事での知られるレビー小体病は、今月の日本医師会雑誌などでも特集が組まれるほどに注目されており、その特集が組まれています。

レビー小体病とは?

レビー小体病(Lewy body disease)は、脳内に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質(α-シヌクレイン)が蓄積することで発症する神経変性疾患です。この病気は、アルツハイマー病やパーキンソン病と共通する特徴を持ち、認知機能の低下、運動障害、幻視などが主な症状として現れます。

レビー小体病には大きく分けて 「パーキンソン病認知症」「レビー小体型認知症(DLB)」 の2つのタイプがあります。どちらもレビー小体の蓄積が原因ですが、パーキンソン病の場合は運動症状が先に現れ、レビー小体型認知症では認知機能の低下が先行する傾向があります。

レビー小体病の主な症状

レビー小体病の症状は多岐にわたりますが、大きく分けると以下のようになります。

  1. 認知機能の変動

    • ある日はしっかりしているのに、別の日は混乱するなど、認知機能の変動が大きいのが特徴です。
    • 物忘れよりも注意力の低下が目立ちます。
  2. 幻視(実際には存在しないものが見える)

    • レビー小体病の最も特徴的な症状の一つで、明瞭な人物や動物が見えることが多いです。
    • これらの幻視は本人にとって非常にリアルに感じられることがあり、恐怖を伴うこともあります。
  3. 運動症状(パーキンソニズム)

    • パーキンソン病と似た症状が現れ、手足の震え(振戦)、動作の遅さ(無動)、筋肉のこわばり(固縮)、バランスの悪さなどが見られます。
    • これにより転倒のリスクが高まります。
  4. 自律神経症状

    • 立ちくらみ(起立性低血圧)
    • 便秘、頻尿
    • 睡眠障害(レム睡眠行動異常症)
  5. 精神症状

    • うつ症状や不安感、興奮などが見られることがあります。

目に関連する症状

レビー小体病では、目に関する症状も重要です。

  1. 幻視

    • レビー小体病の患者さんの約 50~80% に幻視が現れると言われています。
    • 例えば「小さな人が部屋の隅にいる」「動物が歩いている」「家族ではない人がいる」などが代表的です。
    • 幻視は一時的に消えることもあり、本人が自覚している場合とそうでない場合があります。
  2. 視覚認知の異常

    • 視力自体には問題がなくても、物の形や距離感が正しく認識できないことがあります。
    • 文字の読みづらさ、階段や歩道の段差が分かりにくいといった訴えもあります。
  3. 眼球運動の異常

    • 目を動かしにくくなる、素早く視線を移すことができなくなることがあります。
    • これにより、新聞を読むときに行を飛ばしてしまう、視線を合わせづらいといった症状が現れます。
  4. まばたきの減少

    • パーキンソン病と同様に、まばたきの回数が減ることがあります。
    • そのため、目が乾燥しやすくなり、ドライアイの症状が出ることがあります。
  5. 瞳孔反応の異常

    • 瞳孔の反応が鈍くなることがあり、明るい場所でも瞳孔が大きく開いたままになることがあります。
    • これにより、まぶしさを強く感じることがあります(羞明)。

治療法

現在、レビー小体病を完治させる治療法はありませんが、症状を和らげる治療が行われます。

  1. 幻視に対する治療

    • コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン)

      → 幻視や認知機能の改善に有効とされています。
    • ドーパミン作動薬(L-DOPA)

      → パーキンソン症状に対して使用されますが、幻視が悪化することがあるため慎重に使用されます。
  2. 目の症状に対する対応

    • 幻視に対して
      • 明るい環境を保つことで幻視が出にくくなることがあります。
      • 幻視を無理に否定せず、「それは病気の影響で見えている可能性がある」と説明することが大切です。
    • 視覚認知の問題に対して
      • 物の配置をシンプルにし、視認性を高める工夫が有効です。
    • ドライアイ対策
      • まばたきを意識する、人工涙液を使うことで乾燥を防ぎます。
    • 羞明(まぶしさ)対策
      • サングラスや遮光レンズを使用することで、まぶしさを軽減できます。

まとめ

レビー小体病は、認知症の中でも特に目の症状が関与しやすい病気です。幻視は患者さんや家族にとって混乱を招くことがありますが、適切な治療や環境調整によって症状を和らげることができます。眼科医としても、視覚認知の異常や眼球運動の障害に注意を払いながら、患者さんの生活の質を向上させるサポートを行うことが重要です。

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