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[No.3446] 駿河台眼科臨床カンファレンス聴講印象記(14回、2025.4.5)

駿河台眼下臨床カンファレンス

45日の長講印象記です。(於:お茶の水ソラシティーカンファレンス)

オープニング 

アイセンター診療坑儒 森隆三郎先生

 日本大学病院は、御茶ノ水駅に近い駿河台にあり、網膜硝子体手術その他、多くの分野を含むグループを要する眼科で、駿河台専従の医師のほか、板橋の本院からの定期的な応援医師も含めた大きな診療体制を持つ。一人でも多くの患者さんを受け入れる体制を整えているので、臨時の受診を含めて紹介を歓迎する旨の紹介があった。

講演1:日本大学病院アイセンターにおけるロービジョンケア

 アイセンター視能訓練士 山野真弓 先生

 ロービジョンケアは、患者の医療・教育・職業・心理への支援を、タイミングよく行う事を旨とする。黄斑ジストロフィー患者の例では、ニーズの聞き取りとケアのゴール設定を行う。ゴールドマン視野でみられる中心暗点に対応する偏心視を使わせる。NMREADチャートですらすらと読める速さを持てるフォントサイズを決め、これに適合する倍率が得られるルーペを決める。ルーペの購入を支える障害者総合支援法によるサービスなどがあり、必ずしも身体障碍者認定が要らない場合もある。アクセシビリティー改善にアイフォンなどの機材で読み上げ機能を使わせるなどの指導もできる。

 講演Ⅱ:新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドラインについて

アイセンター助手 川野通輝先生

新ガイドラインでは加齢黄斑変性の分類が変わり、ウエットタイプはMNVmacular neovascularization )新生血管型となった。最近この新しい診療ガイドラインの説明を聞く機会は多い。我々市井の開業医は加療の必要が疑われる加齢黄斑変性を見たら受け入れ態勢の整った専門施設に紹介をすることになる。

講演Ⅲ:新生血管型加齢黄斑変性に対するプロルシズマブ硝子体注射の適応と方法

アイセンター助手 中井郁華

 nAMDに用いられる製剤は現在3種あり、ベオビューというのがこのプロルシズマブ硝子体注射製剤の商品名である。硝子体内注射には注射後眼内炎が約5%程度合併する。術後炎症には注射直後と半年程度してからみられる物がある。感染性眼内炎:細菌などの感染による炎症で、痛みや赤みを伴い、治療には抗菌薬や抗炎症薬が使用されるものと、無菌性眼内炎:感染ではなく、薬剤自体への反応によって引き起こされる炎症で、ステロイドの使用が一般的である。感染と注射後の眼内炎の鑑別が重要。最近は従来のPDT(光線力学的療法は、薬剤を静脈注射した後にレーザーを当てて異常な新生血管を閉じる治療法)からこのベオビューに治療法の主体が変わっているという事らしい。

 

特別講演

アイセンター長・教授 中静裕之先生 

眼内炎と眼内レンズ脱臼・落下のパーフェクトマネジメント

白内障術後にレンズが脱臼したり硝子体内に落下して、眼内レンズを取り出したり、固定したりする必要が生じた場合の実際の処置が話された。昔のやや硬いアクリルレンズでは鋏を用いて半分に切って取り出していたが、最近の柔らかいレンズではレンズ挿入に使うカニューレに特殊な鑷子を入れてレンズを把持して引き戻すらしい。その際のカニューラの断端を底ではなく角膜側に向けることでレンズ取り出し時の虹彩脱出を防ぐなどという特殊な技術も紹介された。細菌を想定した蛍光性のある細かい粒子を結膜上に撒き、内視鏡で硝子体手術時の器具の出し入れに伴う粒子の眼内への侵入を見ると、実際の手術時に少なからぬ細菌が硝子体内に混入していることが想像できるというビデオも印象に残るものであった。

今日のお話の数々を今後の臨床診療に生かしてゆきたいというのが印象の総括であった。

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