- 視力が悪くなる? 痩せる2型糖尿病薬の使用で気をつけたい目の障害
- 日刊ゲンダイDIGITAL 健康
公開日:2025/04/25 06:00
新タイプの2型糖尿病治療薬が注目されている。食後など血糖値が高い時だけ作用するGLP-1受容体作動薬(例えばオゼンピック)と、GIPの働きを加えたGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジェラ)だ。血糖値を効果的に下げ、体重も減らせる。ところが、欧米ではまれに「薬を使い始めたら急に視力が低下した」との症例が報告されている。「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長にその原因と注意点を解説してもらった。
今年1月、「JAMA Ophthalmology」は、GIP/GLP-1受容体作動薬使用後に視力低下をきたした9例を報告した論文を掲載。昨年7月にはハーバード公衆衛生大学院が、過体重の2型糖尿病患者1700例の分析で、視力低下の可能性を報告している。ほかにも同様な報告が聞こえてくる。
「現在はその可能性があるだけで、万一、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬に問題がないかを調べている段階です。それ以外の理由として考えられるのは、急激な血糖降下作用が、視覚障害の原因となる可能性です。糖尿病網膜症では、網膜の毛細血管が傷つき、血流が悪化します。急激な血糖降下でこれが増悪することがあり、特に短期間でHbA1cを大きく下げる場合はリスクが高まります。これは網膜の血流調節が急変に対応できないためと考えられています」
強力な薬剤は、網膜症が安定している患者でも悪化に関連する可能性がある。
「もうひとつの目の障害は『前部虚血性視神経症(AION)』です。これは視神経への血流が途絶し、視神経が障害される病気です。特に『非動脈炎性虚血性視神経症』(NAION)は高齢者や動脈硬化の進んだ人に見られます」
糖尿病では血管の老化が進んでいることが多く、血糖や血圧の急変で視神経の障害も起こりやすい。
「治療開始直後に『片目の視界の一部が欠けた』『朝起きたら見えづらい』などの症状が出た場合、虚血性視神経症の可能性があり、早期の眼科受診が必要です」
その一方で、GLP-1受容体作動薬は、メトホルミンより緑内障発症リスクが低下するという報告もある。必ずしも新しいタイプの2型糖尿病治療薬が目に悪いとする報告だけではないのだ。
■眼科検査を受けることが大切
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を使っている人はどのようなことに気をつけたらいいのか?
「急な血糖コントロールの改善は慎重であるべきです。HbA1cが10%台のような患者さんはいきなり正常値に近づけるのではなく、2~3カ月に1%程度ずつ下げていくような緩やかなコントロールが望まれます」
薬の変更や新しい薬を使う時には眼科検査を受けることも大切だ。
「網膜症の有無を確認しておくことは大切です。特に新薬使用の前後に眼底検査やOCT(網膜の断面を調べる検査)を受けておくと異変の早期発見につながります」
視力変化に気づくことも重要だ。
「見え方の変化、片目のかすみ、視野欠損は網膜や視神経の病気のサインかもしれません。糖尿病合併症は痛みがないため、定期検査が必要で、かかりつけ眼科医を持つ必要があります」
新しい薬は、適切に使えば非常に効果的で患者の生活の質を大きく改善してくれる。しかし、効果が強い薬ほど体の変化に目を光らせる必要がある。
新しいタイプの2型糖尿病治療薬を使用する際は、患者本人が目の状態に気を配りつつ、内科だけでなく、眼科の医師の話をよく聞くことが重要だ。
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